ジャンクの風景 小橋 昭彦 2004年3月25日 クローンという言葉を、ぼくたちはそっくりという日常語としてしばしば使う。でも、たとえば猫のクローンは親と同じ模様になるわけではない。生命は、設計図である「遺伝子」だけでは決まらないのだ。遺伝子とは、狭義には、DNAのう […]
浮力と対流 小橋 昭彦 2004年3月18日 ペットボトルを風呂場に持ち込んだ長男が、蓋をして湯船に押し込む。手を離すと一気に水面上へ。「ロケットみたい、なんで」尋ねるので、中に空気が入っているからと答える。しかしそれは、誤解を招く表現かもしれない。空気に上に向か […]
振り子 小橋 昭彦 2004年3月11日 地下鉄の線路は駅を出発すると下りになり、次の駅の手前ではのぼりになる。出発時は坂を転がる要領で加速し、到着時は逆に坂を利用して減速する。電力の節約になるわけだ。そんなことを聞いたのは、国立科学博物館の体験展示室。とすれ […]
五十音 小橋 昭彦 2004年3月4日 いろは歌のように、文字すべてを利用して意味のある文章を作る遊びをパングラムという。いろは歌の誕生は平安中期といわれるが、同じ平安期に五十音図も誕生している。もっとも庶民の手習いにはいろは歌が好まれ、五十音図が広まるのは […]
恋の方程式 小橋 昭彦 2004年2月26日 恋とは不思議なものだ。相手への思いやりが肉体的な痛みを和らげるかというと、そういうものでもないらしい。ドイツの神経科学者の調査によると、慢性の腰痛に苦しんでいる人の場合、配偶者に優しく扱われてきた人は、冷たく扱われてき […]
なぜに嫌う 小橋 昭彦 2004年2月19日 お兄ちゃんを待つ間、2歳の次男は、昨日の雨で湿った幼稚園の砂山を滑り降りている。ズボンのお尻は泥んこ。まいったなあ、車に座るのになあ、手で払いつつ、一方で子どもが服を汚すというあたりまえのことを嫌うなんて変だぞと自分に […]
数量化 小橋 昭彦 2004年2月12日 消失点に向かって収束する直線を何本か想定し、それに添って描いた線に、垂線や水平線を付け足して、箱の絵を描く。透視図法といわれるこの方法を知ったのは中学生になったときだった。あの日の驚きを、今も覚えている。箱のどの側面を […]
食卓の科学 小橋 昭彦 2004年2月5日 お箸の方程式なるものがある。英国の物理学者が、お箸を使う難しさを数式化したものだ。ざっと説明すれば、中華料理を食べる回数に料理の形やすべりやすさや重さを掛けて平方根をとった上でお箸の長さや持ち方といった固有の変数を掛け […]
方眼紙の上で 小橋 昭彦 2004年1月29日 養蚕を営む隣家は、今も桑畑に囲まれた古民家の風情を残す。夏になると小屋からかしゃかしゃと葉をはむ音が漏れ、やがて幼虫たちは天井から吊るされた格子状の箱のそこかしこで繭を作る。日にかざせば、透き通った繭の中に身体を丸める […]
原始の悪夢 小橋 昭彦 2004年1月22日 金縛りにあった経験のある人はどのくらいいるだろう。おそろしい夢を見、身体を動かそうとしても動かせない。もっとも動かせたら身体は過剰に反応して周囲に迷惑をかけることだろう。心理学者ジュヴェは、夢を見ることが多いレム睡眠時 […]
数瞬の救命 小橋 昭彦 2004年1月15日 その物理学論文を読みながら思い出していたのは、ポーの「メールストロムの渦」だった。大渦に巻き込まれた男が、奇跡の生還を果たす。ただ小説の場合と違って、ブラックホールに落ち込むという、論文に描かれた状況はより厳しい。多少 […]
ナノの世界 小橋 昭彦 2004年1月8日 このところ注目されているナノテクノロジー。ナノというのは大きさの単位で、10億分の1を指す。地球の直径を1メートルとすれば、1ナノメートルは1円玉程度の直径ということになるし、逆にぼくの身長を1ナノメートルとすれば、本 […]