小橋 昭彦 2004年2月5日

 お箸の方程式なるものがある。英国の物理学者が、お箸を使う難しさを数式化したものだ。ざっと説明すれば、中華料理を食べる回数に料理の形やすべりやすさや重さを掛けて平方根をとった上でお箸の長さや持ち方といった固有の変数を掛ける、それを皿から口までの距離などで割る。計算の結果、おおむね1000回お箸を使って中華を食べれば、満足できるレベルになるのだとか。
 お箸の場合は半分冗談だが、日本では皿洗いの研究なんてのも行われている。筋電図で上腕三頭筋への負荷を計測したものだ。それによるとカレーライスで汚れた皿を3枚洗う動作は、腕立て伏せ5回分に相当するという。日常の行動をエネルギー代謝率で示す研究もある。基礎的な代謝量と比べてどのくらいエネルギーを使うかを示したものだ。エネルギー消費が多いのは階段を上る動作。布団の上げ下げもその半分くらいとかなり高い。100メートルを1分で歩く速さと同じレベルだ。
 公平なケーキの分け方なんて研究もある。あなたならどうするだろう。二人で分けるときは、一人が公平と思うように切って、もう一人が好きな方を先に選ぶのがスマート。政治学者や数学者らによる研究チームは、それでは完全でないとして、レフェリーを加えている。チョコの部分が価値が高いとかいちごが魅力とか、二人がそれぞれケーキの各部分の評価をし、レフェリーが各人の評価に基づいてケーキを分配する。まあ、ふだん用いるには不便な方法ではある。
 日常に科学を見た人といえば、寺田寅彦。茶碗の湯に地球規模の季節風を見、金平糖に最先端科学につながる疑問を抱いた。そんな彼が「科学者とあたま」と題したエッセイで、科学者は頭が悪くないといけないと書いている。常識的にわかりきったと思われることでつまづき、それを明らかにしようと苦吟することが重要なのだと。急がない、転んだり道草してこそ、美しい花を見つけられる。

3 thoughts on “食卓の科学

  1. まずはお箸については、「Jim Al-Khalili」らによる、「Britains” s Chopstick Phobia Leads to Development of Uncle Ben” s Chopstick Equation」をご参照ください。数式も掲載されています。皿洗いは「“カレーライスで汚れた皿を3枚洗う”動作が
    “腕立て伏せ5回分”に相当
    」をどうぞ。ケーキの分け方は「Francis Edward Su」らによるもので、博士のサイトに、ケーキではないですが、公平分割シミュレーションがあったりします。解説記事「政治学者と数学者がケーキを分けた」もどうぞ。渡辺俊男氏の著書は『人はどうして疲れるのか』で、「Passion For The Future」の解説もどうぞ。あと、「人類働態学会」もご参考までに。寺田寅彦は「かたち [2003.11.17]」「動物の模様 [2003.10.06]」「バスを待つ [2003.09.04]」と何度かコラムでも登場。『科学と科学者のはなし』として手軽な作品集がまとまっています。「青空文庫」でも多く公開されているので、そちらでも。

  2. くだらない話なんですけど(笑)。

    「ケーキの切り方」の話で、中学時代に友達4人とアップルパイを切り分けた時のことを思い出しました。
    切ったのは男の子です。合計5人なのに、いきなりザックザクザクと半分に!(笑)

    そこからは悲惨で、適当にナイフを入れたため、最後はカタチも無くなってしまって。。。ジャンケンで勝った人から選んだのですが、最後の人は台皿を抱えて、涙目で食べるハメになりました。

    私以外の4人は男子です。これが全員女の子だったら、それこそ分度器で測るように切り分けますよ!あとが怖いですからね0(笑)。

    本題に関係ないくだらない話で、すみません。

  3. そういえば、新聞マンガのオチに、5等分とか6等分とかのガイド線が入っているケーキ箱というのがあって、いいかも、と思いました。すでにあるのかなあ。

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