このところ注目されているナノテクノロジー。ナノというのは大きさの単位で、10億分の1を指す。地球の直径を1メートルとすれば、1ナノメートルは1円玉程度の直径ということになるし、逆にぼくの身長を1ナノメートルとすれば、本来のぼくは月までの距離の4倍あまりの身長でそびえ立つことになる。
ナノを日本語の単位で表すなら塵(ジン)だ。なるほど、チリほどの大きさ。もっともたとえば流星塵は10マイクロメートル前後というから、ナノより桁が大きい。1万塵で1つのチリか。
小さな数は親しむことが少ない。調べてみると、分、厘、毛、糸(シ)、忽(コツ)、微、繊、沙(シャ)、塵、埃(アイ)、渺(びょう)、漠(ばく)、模糊、逡巡、須臾(しゅゆ)、瞬息(しゅんそく)、弾指(だんし)、刹那、六徳(りっとく)、虚空、清浄、と続いている。分が0.1で以下一桁ずつ下がっていくが、野球の打率表現とはずれている。後年になって0.1の桁に「割」が割り込んできたらしい。
単位をみると前半が大きさ、後半は時間に関係する漢字が多い。塵にならって沙を見れば、水辺の砂の意味だが、砂粒は2ミリから16分の1ミリまでと定義されているから、1粒は1糸メートルつまり1万沙メートルということになる。刹那とは10のマイナス18乗、指をはじいて音を立てる「弾指」より短い間。
人類が誕生してこれまで、地上に何人の人が存在したろうか。毎年8000万人が生まれる現在の状況からは過大に考えるけれど、実際にはせいぜい一千億人という。とすれば、ぼくという一人は人類にとってナノ(塵)の二つ下の桁、「渺」の単位だ。この文字、水のようにかすかで見えにくいという意。なるほど、ひとりの人間なんてわずかな存在。ただ、渺は六徳や虚空を上回る。六徳は仁や和を含むし、虚空とは仏教用語でいっさいのものが存在する空間。この小さな桁に六徳や虚空をはらむイメージは美しい。
小さな数の単位については、「大数の名前について」「刹那はどれくらい短い?」「小さい数の単位」などをご参照ください。砂については「砂丘のひみつ」などを、流星塵については「Cosmic Dust Researching Group」などを、人類の人口については「人口増加:直面する課題」「人口学」などをご参照ください。
参考リンク先にもありますが、数の単位のうち、小さなところについては諸説あります。コラムではわかりやすい表現の説をとりました。
ところで、数の世界については、大著ですが『虚数の情緒』が感銘深く、面白かったです。
そろそろ、2004年ではないかと
毎回楽しく読んでいます。
今回の単位の件で質問があります。
”分”は0.1、厘は0.01を表すとありますが、野球の打率の表示では、〇割〇分〇厘と
表示されており、”分”は0.01、”厘”は0.001を表しています。
一方で、”9分9厘大丈夫!”という表現はほぼ完全に大丈夫な事を意味していますから、
野球だけ特殊と考えれば良いのでしょうか?
(”分”は”割”を基準にして0.1と考えれば良いのでしょうか?)
昔から疑問に思っていたので、今回を機に是非解決したく、よろしくお願いします!
ナノサイズに関する文章を読んで、科学的な話しになるとこの程度か・・・と落胆しました。
サイズが小さいということは、「だから何ですか?」に
繋がらなければ無意味な内容です。もっと小さいものは幾らでもあるからです。
ナノサイズは量子効果が現われる巨視的な最小サイズとして意味があるのです。
いつも楽しみに拝見させていただいています。
手元の資料だと、「虚空」と「清浄」は「虚」「空」「清」「浄」に分かれて、10の”20
乗から”23乗までに相当しているようです。
ゆーいちさん、ありがとうございます。修正しました。
平井さんありがとうございます。野球だけが特殊かといわれると、確率的な話では普通に「何割」という言い方をしますので、そうでもないですね。歩合算の単位では新しい呼称が標準になり、一方小さな数の単位ではふだん利用しないので、古来のものが引用されると考えるといいのかもしれません。
池上さん、そうですね、科学だからというのじゃなく、どの分野でも筆力はこの程度です。一番の問題はタイトルと導入かもしれません。実際には数字の話なのにナノの話に思えてしまう。(とはいえナノテクの話は取り上げたいと思いつつザツガク的に消化できず取り上げていないのは事実です)
秋吉さん、はい、その通りです。小さい数の呼称には諸説あります。虚空と清浄説をとった理由は、先に補足したように、わかりやすさを求めてでした。
あけましておめでとうございます。
いつも、新しい話題を優しく分かりやすく、展開されておられる高いレベルのご見識に感服するばかりです。
本年も幅広い知識、情報の開き方楽しみにしております。
大変なご苦労があると思われますが、よろしくお願いいします。
珍しくい誤りがあります。ナノの件。地球の直径を1万キロメートルとすれば、だと思います。
ええと、地球の直径が1万2756キロ。その10億分の1が、1.2センチ。1メートルの10億分の1が1ナノメートル。なので、表現としてはあってるんです。でも、なんだかややこしいですね。
小橋さん、あけましておめでとうございます。
昨年10月に生まれてきてくれた長女に「ナノ」と
名付けましたので、興味深く読みました。
親としては、世界から見たら60億人分の1人にすぎないけど、
大きく育って欲しいと夢みています。
今年も家族の皆さま含め、健康でありますように。
大数が仏教からきていると何かの本で知り、
垓以上の数字を一所懸命覚えたことがあります。
そのときは、すべて万進(10の4乗)だと
勝手に思っていたのですが、極までが万進で、
次の恒河沙から万万進だと知りました。
ところで、この説明が、
http://village.infoweb.ne.jp/~fxba0016/misc/suumei/suumei.html
では、紛らわしい記述になっています。
表現では、恒河沙は10の52乗だと
思ってしまうかもしれません。
表を開くと、10の56乗ですね。