模倣と真正さ 小橋 昭彦 2004年12月2日 友人のデザイナーの子は絵がうまい、血は争えない。そう言うと、どうでしょう、ふだん子どもの前で絵を描いていますかと返され、あ、と息をのんだ。血というより、日々の積み重ね。「学ぶ」は「まねぶ」、「真似る」の文語形に通じてい […]
グレイ・グー 小橋 昭彦 2004年11月25日 日本語にすれば、灰色のベタベタとでもいったところ。自己複製できるナノテクロボットが登場し、暴走を始めるとどうなるか。ありとあらゆる有機物を食いつくし、やがて地上は生物のいない灰色の軟塊に覆われてしまう。そんなおそれを表 […]
フィードフォワード 小橋 昭彦 2004年11月18日 ノーベル賞を受賞したリチャード・アクセル教授らによると、人間の鼻には約1000種類の嗅細胞があり、それぞれに1種類の匂い受容体が存在する。匂いはいくつかの分子で構成されており、複数の受容体を活性化する。その組み合わせに […]
らせん 小橋 昭彦 2004年11月11日 身の回りにはらせんが多い。らせんを用いたもっとも広汎な発明品といえば、ネジだろう。身の回りの工業品のうちいくつがネジを使っていることか。工業品に限らない。この銀河系も渦状のらせん構造だし、太陽のコロナ磁場もらせん、台風 […]
スケールフリー 小橋 昭彦 2004年11月4日 まちおこしの目的をわかりやすく表現するのは難しい。それでつい「田舎に向かう人を増やしたい」なんて単純化して言ってしまうのだけれど、ある会合で友人が「都市規模にはジップの法則があって、田舎の人口は増やせない」と指摘するの […]
人はなぜ戦うのか 小橋 昭彦 2004年10月28日 同種内で殺し合いをするのは人間だけである。そう言ったのは動物行動学のローレンツだった。当時は意外性もあっただろうこの言葉が、今はすとんと胸に落ちる。戦いの風景をそれだけひんぱんに目にするようになったということだろうし、動 […]
忘れられた日本人 小橋 昭彦 2004年10月21日 わがふるさとも今月末に合併し、新しい市となる。合併協議会の様子について、別件で取材に来られた新聞記者さんが、あれだけ最後まで紛糾するのも珍しいという。雑談しながら思い出したのが、宮本常一氏の『忘れられた日本人』に描かれ […]
上品でいこう 小橋 昭彦 2004年10月14日 囚人のジレンマと呼ばれる有名なゲームがある。二人の容疑者が別々に囚われている。互いに黙秘すれば刑期は1年ですむ。自分だけが自白して協力すれば釈放、相手は10年の刑期となる。二人とも自白すればお互いに刑期は3年。こうした状 […]
グレイのパラドックス 小橋 昭彦 2004年10月6日 子どもと見ていた番組にイルカが船と並んで進むシーンがあって、イルカって人なつこいなあとあらためて思いつつ、どのくらいの速度を出しているのかと気になってもいた。調べてみると約20ノット、時速にして35キロ程度は出せるとい […]
助けあう理由 小橋 昭彦 2004年9月30日 稲刈りの終わった田にスズメがいる。はじめのスズメが仲間を呼んだのか、群れはいつしか増えている。思いやりの基本のようだけれど、行動生態学者マーク・エルガーによると、もう少し複雑なようだ。というのも、彼らが仲間を呼ぶ理由は […]
さかのぼる時間 小橋 昭彦 2004年9月23日 真空が負のエネルギーを帯びた電子で埋まっているというディラックの考え方は、物理学者にとってはなじみにくいという。それよりはむしろ、陽電子は過去に向かって進んでいる電子と見なせるというファインマンの論の方が受けがいいと。 […]
無いということ 小橋 昭彦 2004年9月16日 ずっと気になっていながら、どう書けばいいか見えなかったテーマが、今回書こうとしている「無い」だ。学生時代に陽電子は「無い」の別表現と知って以来だから、ずいぶん長い話になる。 物理学者のディラックは、真空は何も無い状態で […]