嘘をつく記憶 小橋 昭彦 2003年3月13日 時間というとき、ぼくたちは過去から未来へ続く川のようなものを思い浮かべる。その途中に浮いている船が現在だと。しかし、実際には現在という時間を、ぼくたちは船を指すようには示すことができない。示したとたんに、それは過去にな […]
子どもの時間 小橋 昭彦 2003年3月10日 もうすぐ5歳になる長男と、このところ黙想をしている。正座して、目を閉じ、何も考えない。まずは1分間。あんがい静かにしているもので、ちょっと驚いている。ジャネの法則を適用するなら、彼にとっての1分間は、ぼくにとっての8分 […]
孤独なホモ・サピエンス 小橋 昭彦 2003年3月6日 人類の起源について書こうとすると、落ち着かない気分になる。それというのも、今も新発見が続いている分野で、日々見直しが重ねられているから。おまけにぼくたちには、ヒトは一直線に進化したという誤った思いがある。たぶん、四足の猿 […]
出アフリカ 小橋 昭彦 2003年3月3日 人類はアフリカで生まれ、世界に広がった。そう唱えるのが、クリス・ストリンガーを旗手とする「出アフリカ」説。これに対抗するのが、人類は各地域でそれぞれに進化したという「多地域進化」説だ。DNA解析の結果などもあり、現在では […]
トンボの眼鏡 小橋 昭彦 2003年2月27日 トンボの眼は複眼であると理科で習って、悩まれたことはないだろうか。トンボには世界がどう見えるだろうと。いくつもの像が万華鏡のように見えるのだろうか。その答えは、簡単には見つからなかったと思う。動物心理学者のロイド・モー […]
明暗 小橋 昭彦 2003年2月24日 人間の眼が、明暗に比べて色合いにおおざっぱなのは、それぞれを担当する視細胞の違いによる。色を見分ける錐体細胞は網膜上に650万個、輝度を担う桿体細胞は1億2000万個。数だけでもこれだけ違ううえに、錐体細胞は明るいとき […]
色を見る 小橋 昭彦 2003年2月20日 水中では視界がききにくい。あれは極度の遠視状態になっているからだと、視覚生理学の村上元彦教授の著書で知った。ヒトはものを見るとき、光を屈折させて網膜に焦点をあわせる。水晶体がレンズの働きをしていると説明されるけれど、じ […]
夢の色 小橋 昭彦 2003年2月17日 米国の哲学研究家エリック・シュワイツァベル博士が、昔は夢も白黒だったという論文を発表している。1951年の調査ではカラーで夢を見た人は3人に1人もいなかったのに、現代では大半の人がカラーで見た経験を持っている。テレビや […]
なぜ夢を 小橋 昭彦 2003年2月13日 夢を見た。もうすぐ1歳になる次男がとつぜん歩き始め、上がりがまちから跳び下りまでしている。きっかけは起きてすぐ気づいた。伝い歩きが上手になった彼の話をしていたところに、昨夜は長男と『となりのトトロ』を観た。何度も観た映 […]
原始の食卓 小橋 昭彦 2003年2月10日 男は狩猟で家族を支えてきた。わかりやすい構図だけれど、そういうものに限ってときにあやしい。人類学者のジェームズ・オコネル教授の論文がある。いわく、初期の人類にとって男が果たした役割なんてたいしたことなかったのではないか […]
そらへ向かう 小橋 昭彦 2003年2月6日 鳥の鋭い眼光やうろこのような模様をした脚が苦手という人もいると聞いて、なるほどなあとひとり感じ入っていた。進化系統図をたどれば、始祖鳥の分岐からほど近いところで、肉食恐竜ティラノサウルスへの分岐がある。鳥の脚から無意識 […]
人に擬す 小橋 昭彦 2003年2月3日 野口雨情は幼い子を亡くしていたと読者から教わって、あらためて彼の経歴を読む。生まれて2週間の幼子。失意のどん底から彼は、亡くした子に励まされるように数々の童謡を生む。それを下敷きにすると、七歳か七羽かという「七つの子」 […]