人との間 小橋 昭彦 2003年8月28日 ヤマアラシのジレンマという寓話がある。寒さに震えるヤマアラシのカップル。暖をとろうと抱きあうと、棘で相手を傷つける。といって離れると寒い。ショーペンハウアーによるこの寓話を利用して、精神分析医べラックはヤマアラシ指数な […]
しっぽ 小橋 昭彦 2003年8月24日 たとえば、魚にはしっぽがある。生物学的にいう尾部とは肛門の中心から体幹の後端までを言うそうで、魚の場合ならおおむねぼくらの常識でいう胴体の多くが尾部であったりもする。尾びれは含まない。ややこしいから、ここは一般常識でい […]
自分って何 小橋 昭彦 2003年8月21日 国立国語研究所で外来語の言い換え提案が行われている。案の中に「アイデンティティー」が含まれていて、「自己認識」「独自性」「自己同一性」といった言い換え例があげられていた。identityというつづりには「I」が含まれて […]
パーコレーション 小橋 昭彦 2003年8月18日 ビンゴゲームはご存知だろうか。主催者は1から75より無作為に数字を選ぶ。参加者は5行5列25マスにランダムに数字が書かれたカードを手にし、一致する数が出ればそこに穴を開ける。5マス連続して開けば「ビンゴ」。10個も穴を […]
地球の果てまで6人 小橋 昭彦 2003年8月14日 ベーコン数あるいはエルデシュ数として知られる概念がある。出演した映画の共演者をたどることで何人目にケビン・ベーコンにいきつくかを表すのがベーコン数で、彼と共演していたら1、彼と共演している人と自分が共演していたら2とな […]
まなざし 小橋 昭彦 2003年8月11日 邪視という言葉を知ったのはイスラム文化を学んでいた学生時代だった。ねたみやうらみといった邪悪な視線で見られると災いが起きると今でも信じられている。ギリシア・ローマ時代の地中海地域など広く各地で伝わってきた風習だが、日本 […]
動物の裁判 小橋 昭彦 2003年8月7日 子どもを食い殺した豚が、殺人罪で死刑になる。ブドウの樹を荒らす毛虫が、破門に値すると訴えられる。大麦をむさぼったとして訴えられたネズミに召喚命令が出る。今ならコメディになりそうなこれらの光景が、中世のヨーロッパにおいて […]
古来の体臭 小橋 昭彦 2003年8月4日 マーサ・マックリントックによる古典的な研究がある。1971年に発表されたもので、当時彼女は20代の前半。大学寮で同室の女の子は、生理周期が一致する傾向があるという観察報告だ。先輩研究者はほとんどが男性、マウスでの研究が […]
羽はなぜ 小橋 昭彦 2003年7月31日 飛ぶために羽が進化したというのは、ピアノを弾くために指が進化したというようなもの。プラムとブラッシュが科学誌に発表した論文にそんな一節があって、心にとまった。確かに、進化を目的論でとらえると道を誤る。では、羽はどのよう […]
野菜か果物か 小橋 昭彦 2003年7月28日 畑でもいだトマトを袖口で拭いてかぶりつく。太陽の光を含んで、ほんのり甘い。量販店で買うと野菜にすぎないけれど、ここでは果物のよう。このトマト、日本へは観賞植物として入ってきたのが最初で、北欧や米国でも食用は敬遠されてき […]
ゴミ穴をのぞく 小橋 昭彦 2003年7月24日 老姉妹の静かな生活を描いた『八月の鯨』という美しい映画に、部屋の埃をふきとりつつ、なぜ毎日積もるのとひとり泣きする印象的なシーンがあった。ポール・リオイ博士らの研究グループが、屋根裏部屋の埃を調査したと知って、そんな記 […]
ドラッグ・デリバリー 小橋 昭彦 2003年7月21日 子どもが粉末状の薬をのまないものだから、初めてオブラートを購入。なるほどオブラートで包むとはよく言ったもので、おいしそうに嚥下した。第一関門突破。一般的に薬は、このあとさらにいくつもの難関を越える。胃酸に負けず胃を通り […]