ビンゴゲームはご存知だろうか。主催者は1から75より無作為に数字を選ぶ。参加者は5行5列25マスにランダムに数字が書かれたカードを手にし、一致する数が出ればそこに穴を開ける。5マス連続して開けば「ビンゴ」。10個も穴を開けないうちにビンゴになる幸運な人もいれば、20個近く開けてようやく並ぶという人もいる。もっとも多いのは、およそ15個くらいでビンゴになる人。マスは全部で25個あるから、6割くらい開いたところでビンゴという人が多いわけだ。
この6割という数字に、意味がある。たとえば碁盤の上にランダムに黒石を置き、その目が何割ほど埋まったとき、上の端から下の端まで縦横をたどって黒石がつながるか。これも、およそ6割なのだ。仮に碁盤を無限に広げて行うなら、この数字は正確には59.27%ということになる。こうしたつながりを考える分野、専門的にはパーコレーション理論と呼ばれている。
理論によると、59.27%という数字はつながり方や空間の次元数によって差があり、たとえば3次元空間で単純な立方格子にするなら、3割そこそこが埋まるだけで端から端までつながる。見方を変えて、ひとつの点からどのくらい接点が出ていれば、無限の向こうまでつながることが可能か。答えは、二次元で4.5、三次元で2.8。重複を除くならだが、ぼくたちはひとりあたり4.5人を知っていれば、地球上の誰とでも、知人をたどれば必ずつながることになる。
ぼくがパーコレーションという言葉を知ったのは、社会人になった頃だった。たとえ無限の向こうとでも、何割かの升目を埋めるだけでつながるということがとてもやさしく思え、印象的だった。そして十数年。ネットワークについて調べていて、ぼくは再びパーコレーション理論に出会う。それは、自分自身にとっても自らを模索してきた期間。時を隔てて自分自身もまた、網目の向こうの自分とつながっているのだった。
『パーコレーション??ちょっと変わった確率論入門』という著書の「序文・組見本」のところの解説を少しばかり参考に。「パーコレーションをシミュレートする。」で試してみるのもおもしろいかも。個人的に思い出深い著書は『パーコレーションの科学』ですが、同じ著者による『つながりの科学』が一般向けでおもしろいです。
つながりということについて、考えさせられました。大変面白かったです。いつもありがとうございます。
4.5人知っていれば、世界中の人とつながるといわれますが、それは確率的な話ですね。たぶん、つながらない確率が無限に小さくなると言ったーーー。でも、無限に小さくなっても、つながらない確率はゼロではないのでしょうね。そこが気になりました。
中野 勲
中野さん、ありがとうございます。
>それは確率的な話ですね
確かに確率的な話ではありますが、逆に「必ず」つながる条件としての4.5という数字なんです。「必ず」つながる(不確実な世界から確実な世界へ相転移を起こすということです)ところを探るのがパーコレーション理論のおもしろいところかなあと。
久し振りにこのページを覗いたのですが、ずっと続けておられて関心しました。継続は力ですよね、これからも頑張って下さい。応援しています。
ところで、2次元で4.5ですか、碁盤で考えると上下左右に4つの手しか持てませんよね。と言うことは、人では無限に広がることは出来ても、碁盤では無限には繋がらないと言うことになりますが。??
初めてお便りいたします。
何気なく申し込んだこのサイト、単なる「雑学」ではなく、非常に専門性が高く“目から鱗”状態です。
パーコレーション理論によれば、得意先の拡大を必死の思いで追及している私には、福音書のごとく、「ぼくたちはひとりあたり4.5人を知っていれば、地球上の誰とでも、知人をたどれば必ずつながることになる。」とのことで、営業拡大に確信がもてました。
「意図が明確であれば方法はいく通りもあり、4.5人のつながりを生かしてがんばれ0」と社員にハッパをかけます(笑)。
xxx_KAさん、ありがとうございます。
4.5あれば「必ず」つながるということであり、それ以下ならつながらないということじゃないんです。なので、4.5以下でも矛盾はなく、有限の場合はまた違った数字になろうかと思います。
石山さん、ありがとうございます。はい、いわゆる「雑学系」にはない内容かとは思います。おっしゃっていただいているような、日々の糧になればなによりと願って日々書いております。今後ともよろしくお願いします。
初めまして。
メールマガジン、いつも楽しみにしています。
一つのネタから人の在り方や考え方を指摘する。
そんなに多い行数ではないのに、毎回すばらしくまとまってますね。
ただ情報を得るだけでなく、考えさせられる。
1回で2度楽しめる内容だと思います。
ところで、前回のベーコン数とは数字が異なってくるんですね。
視点の違いでしょうけど。
悪評も 4.5人で 世界中
前回と関連した内容ですね。これは逆説的に言うと、全く独立したグループは4.5グループ以上は構成できない、ということなんでしょうか。全く重複しない事象どんな事象なんでしょう。
ん?
独立の概念と重複の概念が不明ですが、4.5人たどれば関連がでる以上、「3人以上たどらないで」と言うような決まりがないと関連が発生するのでは?
なんかちがうな・・・
ヴェスパさん、rnakajiさん、ありがとうございます。
前回のベーコン数は、点から点へたどっていく経路の数を表しているのに対し、今回の4.5というのは、一点からの紐帯の数です。ひとつの点から何本の触手が出ているかという数。
なので、ひとりあたり4.5人知っていれば、世界中の人がつながることは確かなのですが、誰かにたどり着くためには6人の経路をたどるかもしれませんし、20人たどらなくてはいけないかもしれません(こちらが「ベーコン数」)。
普通ひとりあたり4.5人は知っていそうなので、じゃあ間違いなく世界中の人がつながっているじゃないかと考えてしまいますが、AさんとBさんが4.5人ずつ知っていても、同じ人を知っていたのでは重なってしまって、つながりが広がりません。そういう重複を数えないようにしないといけないのです。そうなると、さて平均4.5人知っているかどうか。
なるほど、よくわかりました。
んー、もっと考え方を考えないとなぁ。
修行します。
ありがとうございまーす!