小橋 昭彦 2020年4月3日

外出の予定が無くなり、家で過ごしているという人も少なくないことだろう。
一刻も早く感染状況が収束に向かってほしいのに、その日はなかなかやってこない。待つ時間は長い。

待つ時間ほど長く感じるのは人の常。かつて「心理的時間」についてコラムに書いたことを思い出し、当時参考にした『時間を作る、時間を生きる』を手に取る。
その中に、不安を感じているほど時間経過を長く感じるという実験の結果が紹介されていて、まさに今がそうかもしれないと思う。

実験はこうだ。目隠しをした人を電動の乗り物に乗せ、5秒経過したと思ったときに知らせてもらう。電動車は階段に向かって進む場合と、階段から逆に進む場合がある。もちろん階段に進む方が被験者にとって不安が大きい。結果、階段に向かうときは平均3.5秒で5秒だと合図したのに対し、階段から逆に向かうときは平均4.1秒だったと。
他にも、クモを入れたガラスケースを45秒間見せ、その時間がどれだけだったか推測させる実験もある。普通の人は33秒くらいと言ったのに対し、クモ恐怖症の人は56秒くらいと答えたと。
不安な時間は、長い。

不安と心理について調べていて、不安障害治療にオノマトペが有用という田中恒彦博士らによる論文を発見する。2015年に人工知能学会論文誌に掲載されたもの。不安障害の治療に、危険のない範囲で不安の対象に直面するエクスポージャー療法という技法がある。その際、不安をオノマトペを用いて表現してもらったという。
つまり、自分が抱く感情を「ゾゾッ」ととか「ズシン」と表現してもらって分類したり、背中に「ベチョ」とする感覚に意識を向けたりすることで、治療に役立てたのだ。

ならばせめてその知見を活用して、この日々の不安に立ち向かおう。迫りくる不安はジリジリか、ヒタヒタか、ミシミシか。あるいはあなたはアワアワし、ヒヤヒヤし、オタオタしているか。
自分に合ったオノマトペとして言葉にすることで、あなたの手中に不安は収まる。
階段に向かっていると思っていた電動車も、やがて逆に向かう日が来る。不安がメリメリあるいはユワユワはぎとられ、ポカポカした陽のもとでワクワクできる日がきっとくる。

1 thought on “不安とオノマトペ

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