顔を触ることでウイルスを体内に取り込んでしまう危険性が広く知られるようになった。人間は1時間に平均23回顔を触るという。
ソースを調べるとオーストラリアの学生を対象にした講義受講中の観察調査で、2015年に発表されている。学生たちもまさか自分たちが人類の代表のように各所で引用されることになるとは思わなかったのではないか。
米国の国立衛生研究所が地下鉄の乗客を対象にした2013年発表の調査もあった。こちらは1時間当たり平均3.6回で、同じくらいの頻度でつり革などにも触っているとある。講義中よりこちらの方が日常実態に近いかもしれない。
日本における調査では、フジテレビ商品研究所が2013年にリビングにおける幼児の行動を観察している。1時間当たり30回から70回とかなり多い。
顔を触る行為は、幼児の場合およそ3カ月を過ぎた頃から現れる。ただしその時点ではそれが自分の顔という認識は無い。
そういう意味での自己認識は1歳半から2歳の頃から。口紅などを身体につけて鏡を見せ、それを自分の身体から取り除こうとするかで確かめる。
自分の顔を触るのは人間だけではない。霊長類も顔を触る行為があり、ストレスなどを反映した転移行動として理解されている。
人間が顔を触るのも、気持ちを落ち着けるためらしい。
ドイツの研究者らが2014年に、記憶テストを受けている途中で雑音を挟む実験を行った。雑音というストレス要因が入ると顔を触る頻度があがる。その際の脳活動を観測したところ、顔を触ったことで集中力や記憶力が高まったことを示唆していたという。
顔を触ることを避けなくてはいけない今、ぼくたちはどうすればいいのか。
ライナスの毛布だ。ふわふわしたものを手元に置き、触れる。桜美林大学の山口創教授の著作にあったが、皮膚を通した感触が心を癒してくれる。
もちろん、本当に望ましいのはふわふわしたやさしい未来。しかし今しばらくは、漫画『ピーナッツ』に出てくる少年のように、毛布を抱きつつ対人距離を保とう。
そんな、ひとりひとりが安心毛布を抱く風景を思い浮かべて、少し心が和んでいる。
オーストラリアの学生での観察調査は、ニューサウスウェールズ大学でのもので、「Face touching: a frequent habit that has implications for hand hygiene.(日本語訳は「顔への接触:手指衛生と関係する頻繁な習慣」に)」です。
米国の国立衛生研究所(NIH)による調査については「Facing Ubiquitous Viruses: When Hand Washing Is Not Enough」にあります。
フジテレビ商品研究所のものは「(88) 手で顔を触る頻度は?」をご覧ください。
ストレスと顔を触る行為の関係を調べた論文は「EEG changes caused by spontaneous facial self-touch may represent emotion regulating processes and working memory maintenance.」をご参照ください。
山口創教授は著書多数ですが、たとえば「皮膚は第3の脳!?「ふかふかタオル」で幸せを感じよう!」などをご参照ください。
山口先生の『子供の「脳」は肌にある』は積読状態のままでしたが、これをきっかけに手を伸ばすとします〜。いつも素敵な気づきときっかけをありがとうございます
かなり前からの読者です。いつも勉強になります。
マスク文献集(情報集)を作っています。そこで、少し顔を触ることを紹介しています。https://docs.google.com/document/d/1SH8pii16imRC1czG1G7g4PgFoDD4aeK9BVNu9hoCBO0/edit?usp=sharing
最近では、「ヒトは一時間に23回顔を触る」ので、マスクの効果があると報道が多いので調べてみた。
●Kwok 2015 たぶんこれが、その根拠論文。23回顔を触るとしているが、学生の講義の時間で、他の報告より回数が多いと他の論文に書いてあった。
https://www.researchgate.net/publication/271647859_Face_touching_A_frequent_habit_that_has_implications_for_hand_hygiene
●Clack 2017 実際の医療現場での状況の論文。いろいろなところをベタベタ触っているよ。
https://www.researchgate.net/publication/320724275_First-person_view_of_pathogen_transmission_and_hand_hygiene_-_use_of_a_new_head-mounted_video_capture_and_coding_tool
●Morita 2019 模擬列車での状況の論文。顔に触れる平均頻度は1時間に17.8回でした。すべての顔のタッチのうち、粘膜接触は42.2%でした。性別に注目すると、顔を触る頻度は女性よりも男性の方が有意に高かった。肌の状態に注目すると、化粧をしていない人の顔に触れる頻度は、化粧をしている人のそれよりも有意に高かった。大きな性差は、化粧に依存する場合があります。
https://www.researchgate.net/publication/335139603_Measurement_of_Face-touching_Frequency_in_a_Simulated_Train
ありがとうございます! すごい、さらにお調べいただいていますね。さっそく参考にさせていただきます。
こちらこそ、いつもありがとうございます。皮膚が第二の脳って話もいつか書きたいと思いつつ、そのままになってます、、、