小橋 昭彦 2020年3月31日

感染拡大防止のため、できるだけ自宅で過ごす。出かけるなら密集を避け、他者との距離は2メートル空ける。いわゆる「社会的距離拡大戦略(ソーシャル・ディスタンシング)」が求められている。
それにしても、外出自粛がこれほどストレスになるとは想像していなかった。せめてコラムを配信して、ほんの数分でもそよ風を届けられればと願う。

思えばパーソナル・スペースに興味を持ってコラムで紹介したのは21世紀の初めの頃だった。それは今求められている「社会的距離」とは別ものではあるけれど、なぜか気になって、再び渋谷昌三氏による『人と人との快適距離』を手に取る。

その中で、アメリカの社会心理学者シャクターが行った実験が紹介されている。女子大生に実験参加を呼び掛け、実験内容に不安を抱かせる場合とそうでない場合の、待ち方の違いを調べたものだ。
実験までの10分間、個室で待つか仲間と一緒に教室で待つか選べる。すると、実験に不安を抱かせた場合は、教室で仲間と待つ方を選ぶ傾向にあった。人は、不安になると他人と共にいることで落ち着こうとする。半世紀以上前の古い実験だが、今でも共通する心理だろう。

同書にはもうひとつ、印象的なエピソードが紹介されている。1977年の夏にニューヨークで起こった大停電の話だ。停電になるまで顔は見かけていても話したことのない「ファミリア・ストレンジャー」だったアパートの住人たちが、暗闇の中、道路に出て挨拶をしたり物を融通しあったりしたという。
同じような現象が、2003年8月にアメリカとカナダの東部一帯で起こった大規模停電でも見られたと、渋谷博士は別の著作で紹介している。

不安なとき、人は誰かといることで落ち着こうとする。大きな災害に襲われるたび、ぼくたちは手を取り合い、連帯して苦境を乗り越えてきた。
だけど先の見えない危機を前にして、ぼくたちはそれを許されない。ならば人間にしかできない方法で立ち向かおう。この世界には同じように不安におびえる人たちがいる。想像しよう。それらの人たちと連帯していることを。心でつながっていることを。

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5 thoughts on “誰かにそばにいて欲しい

  1. ペットなどが身近にいると更にいいんでしょうね。勝手な想像ですが、その場合できれば体温や息遣いなどを感じられる生き物が効果的なんじゃないかと思いますが、どうでしょう。(爬虫類とか虫とかではなく)

  2. きっと。あと物理的にというよりも心理的に閉塞してる感じもありますね。

  3. 「社会的距離拡大戦略(ソーシャル・ディスタンディング)」のカッコ内は
    「ソーシャル・ディスタンシング(Social Distancing)」では?

    多分創刊の頃(別アドレス)から、未だに受信し続けていて、
    どんなネタが来るのか、頻度が減ったなりに楽しみにしています。
    頑張ってください。

  4. ありがとうございます! ほんとだ、何度も見直しているつもりなのに、間違っていました。訂正しておきます。

    かつては毎日でしたから、頻度はがくんと減りました。でも、これからもぜひよろしくお願いします。

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