小橋 昭彦 2012年1月13日

Nature2011年6月1日号に、アウストラロピテクスがどこから嫁入りしたかに関するレポートが掲載されている。オンライン版で読めるので、下記をどうぞ。

Female australopiths seek brave new world

Teeth from ancient human ancestors suggest that females joined new social groups once they reached maturity.

群れの中ではなく、遠くから嫁入りしたようだ、というのがここでの仮説。これは、歯の化石に含まれる2種類のストロンチウムを調べたもの。ストロンチウムは植物に含まれていて、食物連鎖を通じて成長期のヒトの骨に含まれるのだそうだ。その結果、女性の化石のストロンチウム同位体の比率は、その土地ではなく、遠隔地のものと似ていたという。

こうした手法で、今では確認しづらい風習を知るというのは面白い。ただ、化石を傷つけるので、多くのサンプルでできないのが難点だとか。ちなみに、女性が群れを離れるパターンは、チンパンジーのメスが成人すると群れを離れる行動と類似しているのだとか(ゴリラは雌雄とも離れるらしい)。

嫁入りに関して言えば、祖父・祖母らの世代以前の人たちがどこから嫁入りしていたかを知るのは、自動車社会が始まる前の地域の関係を知るよすがとなって興味深い。たとえば、今では消えつつある山中の坂が、昔は人がさかんに通っていて、山を越えて嫁入りした人が結構いるとか。今では、丹波地域が兵庫と京都に分かれて県境を越えての交流はあまりないけれど、昔は京都側の同じ丹波の国からけっこうお嫁さんに来ていたとか。

もっとも、アウストラロピテクスと、複雑化した近現代社会を比較するのは無理があるのだけれども。

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