小橋 昭彦 2011年4月26日

チンパンジーとヒトのDNAは96%が同じことは知られている。ではヒトはチンパンジーと比べて何を得てきたのかと考えるのが普通だけど、あえて「失ったもの」を探した研究で、新しい発見がなされた。

スタンフォード大学のDavid Kingsleyらによる研究。スクリーニングの結果、チンパンジーにあってヒトにないDNA配列は510個あった。そのうち、2つの配列に注目して調べてみたそう。

それらの配列をマウスの胚に導入したところ、AR近くの配列により、一部の動物に見られる固いペニスのとげと感覚毛が同時に形成された。一方、GADD45G近くの配列は、特定の脳領域の成長に対してある種のブレーキとして作用していることがわかり、ヒトはその機能を失うことで大きな脳を進化させたと考えられる。(natureダイジェスト2011年05月号p7)

陰茎棘というのは初めて知った。ネコを飼っている人には常識なのかな。なんでも、それを引き抜くときの痛みで排卵が誘発されるともいうけど、人間にあったらどうだったか。「どのカップルも、この特別なDNA断片が失われたことに感謝していいはずです」という、分子進化学者の言葉が、natureダイジェストに引用されている。

それはともかく、脳の成長もこの「失われたDNA」のおかげだったという発見はおもしろい。何かを足すだけじゃなく、失われること、あるいは空白に価値を見出すという思考方法、ずっと好きなんだけど(「無いということ」など参照)、人間の進化の基本に、そんな事実があったとは。

論文は下記。

Human-specific loss of regulatory DNA and the evolution of human-specific traits

Nature Volume:471,216 219(10 March 2011)

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