マンチェスター大学の研究者らが注目したのは牧草地だった。
ゆっくりと成長する植物がある一方で、生き急ぐように一生を終える植物もある。まるで「ウサギとカメ」の世界だと、研究者は例えている。その違いを生んでいるのは何だろう?
研究者らによると、土壌中の菌類だという。
栄養豊富な土壌は植物の成長を促進する。しかし有害な菌類も集めてしまい、植物の寿命を縮める。一方で栄養に乏しい土壌では植物はゆっくり育ち、有用な菌類との共生関係を築いて長く繁栄する。
人間の場合ダイエットが長生きのコツというけれど、植物もそうらしい。
同じ菌類に着目した研究で、このほど京都大学が発表した成果は、森を対象にしている。
森を伐採すると、はじめは日当たりを好む樹種が生え、時間とともに日陰でも生育できる樹種に変わっていく。植生遷移と呼ばれる現象だ。
この現象を生み出しているのが、土壌の菌類ネットワークだとわかった。
植物の根の付近にはカビやキノコのような菌類がいる。菌類は植物に水を与え、植物は菌類に糖を与える。共生関係だ。この根生菌、菌糸をあちらこちらに伸ばし、土壌中で網目のような構造を作っているという。
この菌類ネットワークが、樹種の成長に影響を与え、ただ森の多様性だけではなく、時間を追った遷移にも影響している。
草原や森。ぼくたちが見ている風景の下、土の中には微小な菌類の壮大なネットワークがあり、それが地上のダイナミックで多様な風景を生み出している。
京都大学の研究は『地下の菌類のネットワークが森林の安定と変化の原動力であることを解明 -なぜ森林ではさまざまな樹木が共存でき、時間とともにその姿を変えるのか- 』で詳細が紹介されています。マンチェスター大学の発表は『Why do some plants live fast and die young?』にて。