芽ではなく、正しく眼の話。植物に視覚があると言われると、野草や木々に囲まれて暮らしている身としては落ち着かない。ここ数年「ものを見る植物」という考え方が浮上してきているという(日経サイエンス2017年3月号)。
チリなどの温帯多雨林に生息するつる性植物には、巻き付いた宿主の葉に似た色や形に「変身」するものがある。仮に「見る」ことなくそれを実現しているとすればどうしているのか。「見て」真似していると考える方がいいのかもしれない。
人間の眼は水晶体を通した像を網膜に映している。2016年には単細胞生物のシアノバクテリアが、その身体自身をレンズにして光を感知しているという研究結果が発表されている。
植物にも光受容体はある。しかしレンズとなると、まさに眼だ。同じような機構が、より高等な植物でも進化しているのかどうか。
気になって調べてみると、すっかり忘れていた、何年か前のNHKスペシャルで「そして”目”が生まれた」をやっていた。その中では、植物が持っていたロドプシン遺伝子を動物がもらったことで、目が生まれたという説が紹介されている。
目を持たない原始のクラゲのような動物が植物プランクトンを食べたとき、植物の細胞が生殖細胞に入り込み、DNAが混ざったのではないかという。であれば、わが眼の存在も植物由来ということになる。
それにしても。仮に植物に眼が備わっていたとして、その視覚情報はどのように処理されているのか。それは果たして「見ている」と言えるのか。
植物の視覚を掘り下げていくと、「見る」とは何かという哲学的な問いにつながる。さて、わが眼は世界を「見て」いるか。ふしあなになっていないか。
書籍『眼の誕生』をご参考にどうぞ。
日経サイエンスの記事は「視覚を備えた植物」で、関連論文は、「Plant Ocelli for Visually Guided Plant Behavior」です。
シアノバクテリアの研究報告は「yanobacteria use micro-optics to sense light direction」ですが、日本語記事「自らの身体自体をレンズにして光を感知する単細胞生物のマイクロ光学系」をご参考にどうぞ。また、変身する植物は「Leaf Mimicry in a Climbing Plant Protects against Herbivory」が元論文ですが、記事「The Sneaky Life of the World’s Most Mysterious Plant」の写真が分かりやすいです。
植物の光受容体については「植物が光を感じる仕組み」を参考にしてください。NHKの番組は「NHKスペシャル 生命大進化」です。「五條堀孝」教授らが登場されていたようですね。
久しぶりに小橋さんの記事を読ませていただき、大変興味を持ちました。
小生は、後期高齢者の仲間入りをして、既に3年を過ぎ生まれ故郷にUターンして、すっかりその気になり、地域活動等していませんが、
新たな発見に出会えることは楽しみです。
今後とも宜しくお願い致します。
ありがとうございます。ひさびさに、そうそうこんな文体だったと思いつつ、書かせていただきました。
かつてのように毎日とはいきませんが、またぼちぼちと書かせていただきます。よろしくお願いします(^^
ロンドンの自然史博物館で視力の進化をテーマにした展示会をやっていた、との情報を現地からいただきました。
COLOUR AND VISION
http://www.nhm.ac.uk/visit/exhibitions/colour-and-vision-exhibition.html