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ちょっと知的な雑学&トリビア

利き手の側が「正しい」

2011年4月21日 【雑学なメモ
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ぼくたちには、いいことは上の方にあって下の方にはあまり好ましくないことがあるように感じるなど、方向感覚と価値観をリンクして考える癖がある。そこで、左利き、右利きの人の価値観が実際の空間の左右認識とつながっているかを調べたところ、自分の利き手の方を「正しい」と考える傾向が明らかになったという話。

Are Your Values Right or Left? The Answer Is More Literal Than You Think

たとえば、右利きの人は右側の方が「正しい/好ましい」方向と考える傾向があるけれど、事故で右手が使えなくなって一時的にせよ左利きになると、左側の方向が「正しい/好ましい」方向と考えるのだと。

英語の「right」といえば、右であり正しいことだけど、これはきっと、右利きが多いことが影響しているんじゃないか、という指摘も。価値観って、純粋に頭で決定していると考えがちだけれど、このように身体的な影響を受けていることを知っておければ、ちょっとばかり冷静にものごとをとらえるきっかけになるかもしれない。

だから今は、「上を向いて歩こう」なのである。論文は下記。

When Left Is “Right”-Motor Fluency Shapes Abstract Concepts

Right- and left-handers implicitly associate positive ideas like “goodness” and “honesty” more strongly with their dominant side of space, the side on which they can act more fluently, and negative ideas more strongly with their nondominant side. Here we show that right-handers’ tendency to associate “good” with “right” and “bad” with “left” can be reversed as a result of both long- and short-term changes in motor fluency. Among patients who were right-handed prior to unilateral stroke, those with disabled left hands associated “good” with “right,” but those with disabled right hands associated “good” with “left,” as natural left-handers do. A similar pattern was found in healthy right-handers whose right or left hand was temporarily handicapped in the laboratory. Even a few minutes of acting more fluently with the left hand can change right-handers’ implicit associations between space and emotional valence, causing a reversal of their usual judgments. Motor experience plays a causal role in shaping abstract thought.(Psychological Science April 2011 vol. 22 no. 4 419-422)

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大阪市立大学の神谷信夫教授らの研究グループが、光合成における酸素発生の謎を解明したというニュース。同大学のプレス発表資料から紹介。
光合成酸素発生の謎を解明-神谷信夫教授(複合先端研究機構)らの研究成果がネイチャー誌に掲載

光合成は、太陽の光エネルギーを利用して,有機物の燃え残りと言える2酸化炭素からブドウ糖を作り出す過程です。ブドウ糖は,我々人間を含め,ほとんどすべての地球生命体が,呼吸によりエネルギーを取り出している栄養源です。光化学系II複合体(PSII,図1)は,太陽からの光を受けて,水を分解して酸素分子を発生させ,同時に電子を発生させています。この電子は,2酸化炭素をブドウ糖まで変化させるために利用されます。これまでPSIIの酸素発生反応は,4個のマンガン原子(Mn)と1個のカルシウム原子(Ca)が複数の酸素原子(O)により結びつけられた金属・酸素クラスターの上で進行しているとされていましたが、そのクラスターの正確な化学組成と詳細な原子配置は明らかにされていませんでした。

今回、我々は、PSIIの結晶の質を従来と比べて飛躍的に向上させることに成功し、大型放射光施設SPring-8(兵庫県・西播磨)を利用してX線結晶構造解析を行いました。これにより、そのクラスターはMn4CaO5の組成をもち,全体として歪んだ椅子の形をしており、ひとつのMnとCaにそれぞれ2個の水分子が結合していることが明らかになりました(図2)。これら4個の水分子のいずれかは、Mn4CaO5クラスターから発生する酸素分子の中に取り込まれるものと考えています。
なんというか、これは直感的な話なんだけど、これまでの人類って、自然に対抗するために技術を磨いてきたみたいなところがあるように思う。それに対して、21世紀のテクノロジーは、インセクトテクノロジーなどもそうだけど、自然から学び、いかにそれを模倣するかに重点が置かれていくように感じている。

光合成が人工的に実現できたら、すごく夢のある話。楽しみな研究だ。
Crystal structure of oxygen-evolving photosystem II at a resolution of 1.9 A

(Nature published:2011 DOI:10.1038/nature09913)
 

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チンパンジーとヒトのDNAは96%が同じことは知られている。ではヒトはチンパンジーと比べて何を得てきたのかと考えるのが普通だけど、あえて「失ったもの」を探した研究で、新しい発見がなされた。

スタンフォード大学のDavid Kingsleyらによる研究。スクリーニングの結果、チンパンジーにあってヒトにないDNA配列は510個あった。そのうち、2つの配列に注目して調べてみたそう。
それらの配列をマウスの胚に導入したところ、AR近くの配列により、一部の動物に見られる固いペニスのとげと感覚毛が同時に形成された。一方、GADD45G近くの配列は、特定の脳領域の成長に対してある種のブレーキとして作用していることがわかり、ヒトはその機能を失うことで大きな脳を進化させたと考えられる。(natureダイジェスト2011年05月号p7)
陰茎棘というのは初めて知った。ネコを飼っている人には常識なのかな。なんでも、それを引き抜くときの痛みで排卵が誘発されるともいうけど、人間にあったらどうだったか。「どのカップルも、この特別なDNA断片が失われたことに感謝していいはずです」という、分子進化学者の言葉が、natureダイジェストに引用されている。

それはともかく、脳の成長もこの「失われたDNA」のおかげだったという発見はおもしろい。何かを足すだけじゃなく、失われること、あるいは空白に価値を見出すという思考方法、ずっと好きなんだけど(「無いということ」など参照)、人間の進化の基本に、そんな事実があったとは。

論文は下記。
Human-specific loss of regulatory DNA and the evolution of human-specific traits

Nature Volume:471,216 219(10 March 2011)

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