小橋 昭彦 2011年4月20日

大阪市立大学の神谷信夫教授らの研究グループが、光合成における酸素発生の謎を解明したというニュース。同大学のプレス発表資料から紹介。

光合成酸素発生の謎を解明-神谷信夫教授(複合先端研究機構)らの研究成果がネイチャー誌に掲載

光合成は、太陽の光エネルギーを利用して,有機物の燃え残りと言える2酸化炭素からブドウ糖を作り出す過程です。ブドウ糖は,我々人間を含め,ほとんどすべての地球生命体が,呼吸によりエネルギーを取り出している栄養源です。光化学系II複合体(PSII,図1)は,太陽からの光を受けて,水を分解して酸素分子を発生させ,同時に電子を発生させています。この電子は,2酸化炭素をブドウ糖まで変化させるために利用されます。これまでPSIIの酸素発生反応は,4個のマンガン原子(Mn)と1個のカルシウム原子(Ca)が複数の酸素原子(O)により結びつけられた金属・酸素クラスターの上で進行しているとされていましたが、そのクラスターの正確な化学組成と詳細な原子配置は明らかにされていませんでした。

今回、我々は、PSIIの結晶の質を従来と比べて飛躍的に向上させることに成功し、大型放射光施設SPring-8(兵庫県・西播磨)を利用してX線結晶構造解析を行いました。これにより、そのクラスターはMn4CaO5の組成をもち,全体として歪んだ椅子の形をしており、ひとつのMnとCaにそれぞれ2個の水分子が結合していることが明らかになりました(図2)。これら4個の水分子のいずれかは、Mn4CaO5クラスターから発生する酸素分子の中に取り込まれるものと考えています。

なんというか、これは直感的な話なんだけど、これまでの人類って、自然に対抗するために技術を磨いてきたみたいなところがあるように思う。それに対して、21世紀のテクノロジーは、インセクトテクノロジーなどもそうだけど、自然から学び、いかにそれを模倣するかに重点が置かれていくように感じている。

光合成が人工的に実現できたら、すごく夢のある話。楽しみな研究だ。

Crystal structure of oxygen-evolving photosystem II at a resolution of 1.9 A

(Nature published:2011 DOI:10.1038/nature09913)

 

Leave a comment.

Your email address will not be published. Required fields are marked*