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ちょっと知的な雑学&トリビア

日本語は農耕とともにもたらされた

2011年5月06日 【雑学なメモ
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東京大学の長谷川寿一さんらがこのほど発表した報告によると、日本語の起源は、2182年前のひとつの母語に遡ることが分かったそうです。これは、朝鮮半島から農耕がもたらされた時期と一致します。それ以前に日本に住んでいた民族に代わって、この時期に農耕とともに、新しい言語を持った民族が日本に入ってきた。そんな古代の様子が見えてきたことになりますね。

それにしても、現在の日本語の起源がわずか2000年あまり前なんて、信じられない気分。というか、それを言い始めると、このわずか2000年の間に、日本は石器社会から現代文明まで、一気に発展したわけで、その方が不思議ではありますね。

今回の言語の起源を求める方法、進化遺伝学の手法を応用しているところもユニーク。これ、つい先日、世界の言葉の起源がアフリカにあるという研究発表(「言語もまた出アフリカ?」)でも用いられた手法ですね。

論文は下記です。

Bayesian phylogenetic analysis supports an agricultural origin of Japonic languages

Languages, like genes, evolve by a process of descent with modification. This striking similarity between biological and linguistic evolution allows us to apply phylogenetic methods to explore how languages, as well as the people who speak them, are related to one another through evolutionary history. Language phylogenies constructed with lexical data have so far revealed population expansions of Austronesian, Indo-European and Bantu speakers. However, how robustly a phylogenetic approach can chart the history of language evolution and what language phylogenies reveal about human prehistory must be investigated more thoroughly on a global scale. Here we report a phylogeny of 59 Japonic languages and dialects. We used this phylogeny to estimate time depth of its root and compared it with the time suggested by an agricultural expansion scenario for Japanese origin. In agreement with the scenario, our results indicate that Japonic languages descended from a common ancestor approximately 2182 years ago. Together with archaeological and biological evidence, our results suggest that the first farmers of Japan had a profound impact on the origins of both people and languages. On a broader level, our results are consistent with a theory that agricultural expansion is the principal factor for shaping global linguistic diversity.(Proc. R. Soc. B,May 4, 2011, doi: 10.1098/rspb.2011.0518)

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わずか32歳で生涯を閉じたインドの天才数学者ラマヌジャンが残した分割数に関する予想に、ほぼ1世紀ぶりに答えが見つかったという話を日経サイエンスで見かける(日経サイエンス2011年6月号p18「ついに解けた100年の謎」)。分割数という言葉は初めて知ったのだけど、単純な概念なのに、調べてみると奥が深い。

分割という名の通り、ある数字を分割するのがこの概念。たとえば3だと、「1+1+1」「2+1」「3」という3通りに分割できる。これを「p(3)=3」と表記する。p(4)だと5だ。同様に、p(5)=7、p(6)=11、p(7)=15、p(8)=22、p(9)=30……。このあたりまでなら、なんとか子どもの遊びのようなものだよね。

だけど、,p(10)=41、p(11)=56、p(12)=77、その後数字はどんどん大きくなる。ちなみに、p(100)の場合、190569292と、1億をかるく超えている。これらの関係性っていうのに、オイラーをはじめ、著名な数学者が取り付かれてきたのだと。Ken Onoさんは、大学近くの森林を散歩しているとき、そこに見られる木々と同じように、分割数にもフラクタル・パターンがあるのではないかと気づき、さっそく論文にまとめたという話。

先日、録画しておいた『博士の愛した数式』を見て、原作に劣らず素敵な話だなあと思ったのだけど、数学って、こういう単純さのすぐ側に奥深い世界があって、ぼくはそれを覗くツール(数学的素養)を持っていないのが残念なのだけど、やはり誌的でおもしろい。

それにしてもフラクタル(と、べき乗則)、あちらこちらで顔を出します。
photo credit: gadl

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日経サイエンス2011年6月号の特集は東日本大震災。なかに心理学方面から心の回復力を取り上げた記事(「立ち直る力のメカニズム」G.スティックス)がありました。回復力の英語はresilience。反発力というのが語義。

回復への過程は人それぞれです。悲しい中に、笑いもあります。強がりの笑い、というわけでもないそうです。
(前略)ビデオをスロー再生して、眼の周りの眼輪筋の収縮を調べた。この表情筋の動きでできるしわは「デュシェンヌ線」と呼ばれ、これを見ると、本物の笑いと儀礼的な笑いを見分けることができる。その結果、悲嘆に暮れている人の笑いは本物だと判明した。
また、通常の状況ならナルシズムにとらえられかねないような「自己高揚バイアス」に陥る人もいます。だけど、そのおかげで、「あのときこうすればよかった」という終わりのない責めから脱出できているのかもしれない。
先の笑いの研究と同様、死別を経験する過程をより詳細に見ると、喪失への健全な適応過程を表すのに使われてきた分類にうまく当てはまらないような、さまざまな反応がとらえられた。それが複雑多岐にわたるのを見て、ボナーノは従来の分類に当てはまらないこうした反応を「不格好な対処法」と名づけた。
不格好でもいいじゃん。そうした人それぞれの対処法が、心を救っている。

回復力の本質は何かという問いに、脳と化学の方面から解説した部分についてもメモしておきます。

危機的な状況下になると、ストレスシグナルとしてコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)が大量に分泌される。このホルモンがさまざまな化学物質を誘発し、戦うのか逃げるのか、さまざまな選択肢が活発に脳内で検討される。でも、ストレス状況が長く続いてこうしたストレスホルモン(たとえばコルチゾール)が大量に分泌された状態のままになると、心や身体を傷つける。回復の早い人は、ある種の保護物質を持っていて、こうしたストレスホルモンの働きが早い段階で抑制されるという。そうした化学物質はたくさんあるそうだ。たとえば視床下部で作られコルチコトロピン放出ホルモンを阻害して不安を鎮めるニューペプチドYなど。

最後に、どうしてぼくたちは回復力を持っているかについて、コロンビア大学のGeorge A. Bonannoの推測。
誰かを失った後の沈んだ気分は癒しの助けになるが、仮借のない深い悲しみは、病的なうつ状態のように、とうてい耐え難いもので、人を押しつぶしてしまう。このため、たいていは私たちの脳の中の回路が働いて、悲しみに打ちひしがれた心理状態が続かないようにする。
進化心理学的な観点からも納得できる話です。悲しみを乗り越えられなかったら、死別の多かったろう古代から現代まで、ヒトは生き残れなかったでしょうから。これまでも何度も大きな悲しみを乗り越えてきた。それがヒトという種なのでしょう。

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