思い通りにいかないときも多いけれど、夜半をすぎてパソコンを前にしないようにと心がけている。ディスプレイの明るい光を夜間に浴びることで体内時計を狂わさないようにと気づかってのこと。
人間にはサーカディアンリズムと呼ばれる周期があって、それは時計遺伝子によってつかさどられている。複数の遺伝子とそれがつくりだすタンパク質が体内時計を整えているわけだ。本来は24時間よりすこし長い体内時計のリズムが地球の一日と一致できるのは、毎日光を浴びて時計をリセットしているからだ。これを逆手にとって、夜勤中明るい照明を利用することで眠気を防ぐなどの工夫も行われている。
時計遺伝子は1984年にショウジョウバエで発見されて知られるようになった。人間の体内時計は脳の複雑なネットワークによるのではという考え方も根強かったが、1997年以降マウスなどの哺乳類やヒトでも同様の遺伝子が発見された。人間の体内時計も、けっきょくは小さな細胞内での遺伝子時計発振によっているわけ。その中心は、脳内の視交叉上核という場所にある。
これまでショウジョウバエでは羽や足、触覚などにも時計があることが知られてきたが、人間でも皮膚や臓器の細胞の中にも時計があると、神戸大学の岡村均教授らのグループが突き止めている。時計遺伝子が、全身に分布する線維芽細胞の中でも働いているのだ。どうやらそのおかげで、夜食をしても胃や腸が昼と同じようにスムーズに消化活動をはじめたりできるらしい。
ただ、そのままでは人間のからだのあちらこちらで違う時間が進むことになるので、脳にある体内時計が、一日一回、それらを同調させていると考えられている。その精巧さ、不思議さ。
目を閉じて、自分のからだの時計の音に耳を澄ませてみる。植物にいたるまで、地上のさまざまな生命の中で、その時計は時をきざんでいる。
体内時計については神戸大の岡村均教授がさまざまな成果をおさめられていますが、その関連として「時計遺伝子」「体内時計遺伝子を“生”観測」「時計遺伝子からみた哺乳類生物時計」などの記事・発表をご参照ください。「生物時計を動かす遺伝子」の記事もどうぞ。ほか、「体内時計のネジをまこう!」「照明で“体内時計”調節」も参考になります。
パソコン・ディスプレイの画素子の密度はテレビの2
倍、人体が受ける光量は約4倍になると読んだことが
あります。
昔は、「目が悪くなるからテレビから2m以上離れな
さい」とか言われたもんですが、じゃあ今OA機器に
向かって一日中仕事をしている我々って何なんでしょ
う…。