小橋 昭彦 2001年5月15日

 帰省したついでに、押入れの整理をした。小学生時代の通知表に出会う。成績はともかく、人の話は聞くものの、低学年のころは発表のとき顔も上げられない内向的な性格だったらしい。その性格は基本的にはいまも変わっていないし、三歳の息子にまで引き継いでしまったかもしれない。
 1キロ先の小学校まで、ランドセルを背負って集団登校をしていたあのころ。時間割をみて教科書をつめて、ときには竹尺やたて笛をわきから突き立てて。ランドセルは、学びのきっかけとなるものがぎっしりつまった宝箱のようなものだった。
 ランドセルはオランダ語のranselが転化したもの。もとの意味は背のうで、つまりは軍が用いていた。幕末に洋式の軍制を導入したとき、この言葉を持ち込んだらしい。それが学校で用いられるようになったのは1885年の学習院がはじめで、馬車や人力車での通学を禁止し徒歩通学を命じたときに着用させたという。
 そのころまだ布製だったランドセルが現在のように革製箱型になったのは、のちの大正天皇が学習院に入学するとき、伊藤博文が献上したことにはじまるともいわれる。当初上流の家庭の、あるいは都市型の商品だったランドセルが一般に普及しはじめるのは1950年代以降。
 毎日、かならず何かを学んでいた、そのためにこそ毎日があった貴重な時代。いや、いまでもやはり、その気持ちだけは忘れないでいたいと思う。流されない。日々、何かを学ぶ、なにかを自分に積み立てていく。今日は、なにをランドセルに入れようか。

7 thoughts on “36歳のランドセル

  1. 今日の没ネタ。古代中国の青銅器、現在でも製造法が不明(朝日4月8日)。

  2. えーと、小学校卒業ははるか彼方の出来事ですが、依然として学ばなければならないことは多いわけでして。遼太郎くんがマスターした「草引き」って、なんですか???

  3. あら、辞書にもない言葉でした(汗)。畑の雑草をぬく作業です。一般になんというのかな、草取りかな。

  4. あ、「マスター」とおおげさないいかたをしたのは、つまり彼が野菜と雑草を見分けて抜くことができるようになった、という点を評価してです。

  5. おお!「草取り」「草むしり」のことなのですね。きっと「草取り」は東の言葉、「草引き」は西の言葉なのでは。確かに有用と無用の観念が身につきつつあるって、大人なかんじ、、、

  6. 学生しながら講師としてお世話になっています。
    知識をインプットして仕事でアウトプットし、
    仕事で得た報酬で学費をまかなっています。
    「循環」という言葉にまさに当てはめられているような、
    そんな毎日です。

    りょーたろーくん、ししゃものおなかもおいしいゾ。

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