まずは副題にある8つの仮説を並べておこう。
ゲイは遺伝である
世界は神が設計した(インテリジェント・デザイン説)
人間は昔よりバカになっている
念力で物を動かせる
地球温暖化は心配することない
宇宙に複雑な生物はいない
偽薬でも病気は治る
コレステロールを気にする必要はない
嘘か本当か気になって仕方ないかどうか、これは人によるだろう。少なくとも日本人にとって、最初の二つはあまり気にならないのではないか。
ことに2番目の仮説は、アメリカではこれがマジメに論争になっていて、教育現場でも激論が交わされ、ひょっとすると(皮肉にも)科学に対する関心を高めるきっかけにもなっているようなのだけれど、日本では進化論を疑う人はあまりいないだろう。
これら8つの仮説について、ロバート・アーリックは0から4までの「インチキ度」をつけている。0だとインチキじゃない。4はまったく疑わしい。
再掲しよう。
ゲイは遺伝:(同性愛は生得的であることについては)0
ID説:3
バカになっている:2(賢くなっているについては1)
念力:4
地球温暖化:1
宇宙人不在:2
偽薬:0
コレステロール:2
それぞれの詳細な解説は本書を楽しんでいただきたい。
少しだけ、注意点を。
今話題になっている地球温暖化を心配することはないという結論にインチキ度1とある。しかしこれは、地球温暖化が起こっていないということではない。
温暖化が進んでも、先進国にとっては利点となるという観点がひとつと、それでも不利な点があるなら、今からコストをかけるより、それが明らかになってからでも間にあうという立論に納得性がたかいことから、心配することはないという説にアーリックはポイントを与えている。
これが、本書の基本姿勢だ。
アーリックは、総論ではなく、その説の立脚しているデータに基づき、正しく科学的な視点で立論されているかを重視しているのだ。
だから、ある仮説の立論が疑わしいことが、そのまま対立する仮説の証明にはならない。「賢くなっている」「バカになっている」どちらもそれなりにインチキ度が低いように。
語り口はある程度専門的であり、タイトルほど軽く読める本ではない。
しかしその分、読者は、科学的立場というものがどれほど厳密であるべきなのか、本書から学び取ることができるだろう。