小橋 昭彦 2001年4月25日

 つづら折を九十九折と書くように、九十九は多いという意味によく使われる。もっとも千葉県の九十九里浜は約60キロと確かに長いものの、36町ではなく6町を1里とする古くからの測り方によれば、1里を654メートルとして確かに九十九里に近くなる。石川県の九十九湾も入江が99あるというけれど、さてこちらはどうなのだろう。
 一方、長崎の九十九島(くじゅうくしま)の場合は、島の数ははるかに多い。実際には208だと発表したのが、佐世保市の市民らによる九十九島の数調査研究会。今まで調べられなかったのかと思う向きもあるかもしれないが、島を数えるのは、じつは難しい。そもそも、「島」とは何なのか。
 海上保安庁では、満潮時に水面上に周囲100メートル以上あること、などと定義し、日本には6852の島があるとしている。しかし、いざあなたが目の前の「島」を数える場合、干潮時にはひとつの島なのに満潮時に分断されて「島」でなくなった場合どうするか、など悩むことだろう。
 九十九島の場合は、自然に形成された陸地で満潮時に水に囲まれ水面上にあること、植物の生育が認められること、という条件で測定。植生を加えたのがミソで、その結果、地元で千畳敷と呼ばれている大きな岩場が認定から外れたり、逆に潅木一本の小さな岩を島と認定したりもした。生命が根付く安定性、安全性があってこそ「島」だと定義したわけだ。
 振り返れば、ぼくたちの銀河系もまた、島宇宙と呼ばれている。こちらの数は、この宇宙に千億以上といわれているけれど、そのうちどれだけに生命が宿っていることだろう。ともあれ、この「島」宇宙の片隅の、青い星の小さな生命をいつくしむ。

5 thoughts on “九十九の島

  1. 私,生まれは佐世保市です。高校までいました。
    佐世保に住んでいても,九十九島めぐりなどはした事がありませんでした。

    今,佐世保といえば,ハウステンボスが有名になってますが,たまに帰省すると,烏帽子岳や弓張岳に登ったり鹿子前に行って海見たりすると,落ち着きます。

    金沢に旅行に行ったときに,千枚田というのがありましたが,九十九島もあの類ですね。

  2. コラムを書いていて気になったのですが、九十九島と書いて「つくもじま」というのもあって、こちらは島原半島の東側の島嶼群、と小学館のスーパーニッポニカにはありました。同じ字でも読み方によって違う場所を示していることになるのですが、よく知られたことなのでしょうか?
    佐世保市の方はサイトでの説明や調査研究会の呼称を優先して「くじゅうくしま」としましたが、地元での一般的な呼び方もそれでよろしかったでしょうか?

  3. 九十九里浜。
    なるほど、九十九里に近づく計算方法があるんですね。
    昔聞いた説では、砂の色が白いので、昔は白浜といったが、百という字から一を引いて九十九としゃれて表現したということでした。
    本当のところどうなんでしょう。

  4. 九十九をつくもというのは、「百」を「も」と呼ぶところからしゃれてのことですが、九十九里浜の場合は、源頼朝が矢をさして測定した、という伝説が有名。そのとき百だったんだけど一ひいて九十九にしたという話もあるので、そのとき、白浜とのしゃれを含んでいたのかもしれませんね。

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