上司にしかられているとき、あるいは重要な発表の直前。ねっとりしただ液が口の中に広がり、ごくりと喉を鳴らす、そんな経験のある人は少なくないことだろう。なにせこの世はストレス社会。
米国の社会学者ホームズらによる、ストレスと健康の関係を調べた有名な研究がある。知人の死亡や仕事の変化、引越しなど、ライフ・イベント(人生事件)を43項目に分類、それぞれのストレス値を算出して、総合点数が高いほど健康を害す割合も高いことを明らかにしたもの。
ストレスは脳下垂体前葉ホルモンの放出と密接な関係があり、副腎皮質刺激ホルモンやプロラクチンなどがストレスに反応して放出される。副腎皮質刺激ホルモンは副腎皮質からグルココルチコイドの放出をうながすが、それを引き金にだ液中に分泌されるのが、アルファ・アミラーゼという酵素。
富山大学らの研究グループが、この酵素の量を調べてストレスの大きさを測定する技術を開発した。特殊なビニール製チューブでだ液を採取、測定装置にかけることで10分程度で酵素量がわかるのだとか。
脳波を調べる従来の方法と比べて簡便。健康診断など以外にも、たとえば商品を使ってもらいながらだ液を測定したりして、利用者のストレスが少ない商品開発につなげられないかなどと考えられている。Webサイトを使いながら測れば、ユーザビリティの向上にもつながるだろうか。
生きている以上、ストレスがあるのはしかたない。山を登るとき息切れするように、自分を高めようとするがゆえに辛いのだろうと、そんなくらいに考える。ねばっこいだ液を舌に、かつて胃炎をわずらったあたりをなでながら。
ストレスについては、「第一製薬-ヘルスケア-ヒーリングスタジオ」「ストレス」などをご参考に。ライフ・イベントについての詳細な記述もあります。だ液測定技術を開発したのは、日経3月23日によれば、「富山大学」ほか「ヤマハ発動機」「二プロ(当時ニッショー)」の共同研究グループでした。