小橋 昭彦 2001年4月12日

 言葉は、日々新しい。ほぼ10年ごとに改訂されている三省堂国語辞典の場合、新版が出るごとにおよそ3000から4000の新項目が加わっている。1日にひとつは辞書掲載レベルの言葉が生まれている計算。いまの新聞を調べると、カタカナ言葉を中心に新語が毎日10くらい見つかるともいう。
 カタカナ言葉の由来は英語からのものが多い。いま英語は、母国語あるいは公用語として7億5000万人がしゃべり、さらに10億人が学んでいる。2050年には世界人口の半数が英語をたっしゃにあやつるという説が王立協会の発表にある。
 ビジネスでも主役は英語。企業で使われる言葉と総売上高などに注目して換算した英語の経済価値は、5兆4550億ポンド、日本円にしておよそ1000兆円だとか。日本語の経済価値はそれについで2兆9600億ポンド、ドイツ語が1兆7140億ポンド、スペイン語が1兆2490億ポンド。
 とはいえ、普及した言語はまた分解の危機も抱える。英語も変種に分かれ、互いに理解不能になる可能性があると、言語学者のデビッド・クリスタル教授は指摘する。かつて世界中のウェブページの8割以上を占めていた英語ページが、いま半分にせまるまでに減り、多言語化しているように。
 言葉は、日々うつろう。いま口にしているひとことは、このひとときのいのち。人も思いも世の中も、今日とはほんの少し違う明日があり、消えていく言葉がある。
 今日の気持ちは、今日のうちに伝える、今日の言葉にのせて。

2 thoughts on “いましか、言えない

  1. このテーマは、「王立協会」での研究発表にヒントを得たものですが、その中心となったのは「David Crystal」教授らです。「The Timesの記事」が詳しいです。三省堂の辞典については、「各版への序文」に詳しいです。新聞に毎日10の新語が見つかるとは、この編集をされた青木利正氏の言葉(日経4月8日)。

  2. 今日の没ネタ。コンピュータの回路を二進法に一変させたクロード・シャノンさん(朝日3月19日)。

Leave a comment.

Your email address will not be published. Required fields are marked*