レオナルド・ダ・ビンチが、謎のほほえみを持つ絵画をなしただけではなく科学者でもあったと聞くと、まさに万能の天才だな、と遠い気持ちになる。しかも、解剖学から動物・植物学、数学、機械工学にいたるまで専門分野を問わない。
いま、科学は専門化している。自然科学だけではなく、人文、社会科学においてもそうだ。歴史が専門というだけではなく、どの国か、あるいはどの時代かが問われるように。
だけど、たとえば地球温暖化を解決するためには、自然科学的なアプローチだけでは不十分だ。先進国と開発途上国との協力関係や経済発展に与える影響など、政治学、経済学、法学といった、人文科学や社会科学まで含んだ幅広い検討が必要になる。
だから、縦割りで体系化されてきたこれまでの科学技術の視点じゃなく、あらゆる科学知識を総動員した研究をしようというのが、「社会技術」だ(朝日2月2日)。
社会技術は、地球温暖化のような大きなテーマに適用されるだけではない。たとえば工場での作業手順。部品を間違えることが多いのならば、技術的な側面ではなく、それぞれの部品に「太郎」「花子」あるいは「東京」「大阪」なんて名前をつけておくといいかもしれない、という検討。あるいはマニュアル違反が多いならば、それは違反すると楽だからかもしれない。では、安全な作業がもっとも楽になるように手順を考える。
社会技術は、人間的な側面を重視して、科学体系を組みかえることでもある。いま、情報技術がクローズアップされているけれど、21世紀は社会技術の時代にもなる、そんな気がするんだ。
今日の没ネタ。地震後、インドの「街の日」が消えていることを人工衛星から確認(日経2月2日)。