大脳について学んだ記憶はあるのだけれど、小脳については薄れている。そのサイズゆえ学ぶ気持ちが軽くなったかもしれない。運動をつかさどる脳というのが一般的な認識。最新の研究は、それに疑問符を提示する。
まずは名前からうけるイメージをぬぐおう。サイズこそ大脳に比べて小さいけれど、ひだが細かく表面積はあんがい広い。大脳の平均1900平方センチメートルに対し、1128平方センチメートルもあるのだ。大脳はおおむね新聞の一面ほどと考えればいいから、それを半分に折った面積分が、野球ボール大におさまっているわけだ。
小脳はどんなときに活性化するのか。ニューロンの電位変化を調べると、ネズミの場合は口、ネコは前足、サルは指を触ったときとわかっている。この違いはなぜ生じるのか。周囲の環境を知るとき、それぞれの動物がどこを用いているかに注目。ネズミは口、ネコは前足、サルは指。小脳はこうした触覚情報を処理し、比較する役割を担っているのではないかというわけだ。
小脳は、何かの機能を分担しているのではなく、知覚情報を統合するプロセスを支援していると考える。小脳をすべて取り除いた動物が、充分時間をおけばかなりの程度回復するという事実も、こうした見方を裏付ける。小脳に傷を負った患者は、かみそりの写真を見るとき、「鋭い」などの形容詞は簡単に思いつくのに、「剃る」といった動詞を思いつくには時間がかかるという。形容詞がひとつの物質の属性表現である一方、動詞を思いつくには他の物質との関係性の把握が必要になると考えれば、小脳が知覚を統合するという仮説に添って説明できる。
これからは、ひとつの現象や価値観で分析判断するのではなく、総合的にとらえる「小脳力」が必要かと、そんなことを夢想したクリスマスの日であった。
James M. Bower博士らによる研究は、「Scientists focus on a new hypothesis ? of the cerebellum as a support structure that fine-tunes the brain” s sensory input」をご参照ください。