ビッグフット、イエティ、雪男。彼らが大型類人猿ギガントピテクスの子孫だとして実在を信じる人もいる。ギガントピテクスはゴリラより2倍から3倍大きな類人猿で、約30万年前まで中国などに生息しいた。仮に生存しているならビッグニュースだけれど、絶滅したとされて後の化石はなく、可能性は低い。ギガントピテクスをはじめ、2200万年前から550万年前にかけて100種以上知られる類人猿だが、多くは絶滅し、今に残るのはわずか。
現在も生息しているのは、大型類人猿のオランウータン、ゴリラ、チンパンジーと小型類人猿のテナガザルとフクロテナガザル。このうち人にもっとも近いのは、600万年前までにヒトとの共通祖先から分かれたとされるチンパンジーだ。ゴリラは約900万年前に、オランウータンとは約1600万年前に分かれたとされる。小型類人猿を含むホミノイドの共通祖先とされるのは、1900万年前のプロコンスル。
一般的に類人猿はアフリカで誕生し、ヨーロッパやユーラシア大陸へ広がったとされる。しかし大型類人猿の化石は、ユーラシアでしか見つかっていない。そこで人類学のデイビッド・ビガン博士は、現代類人猿はユーラシアで生まれたと唱えている。2000万年以上前にアフリカで最初の類人猿が誕生、300万年あまりして、ユーラシア大陸に移る。その後ユーラシアが海水面の上昇によりアフリカから切り離されている間に、大型類人猿が誕生し多様な進化を遂げる。しかし900万年前から600万年前にかけて、気候変動の影響で多くが絶滅。後にオランウータンになるシバピテクスの系統とゴリラやチンパンジー、ヒトにつながるドリオピテクスの系統が、アフリカと東南アジアに移住して生き残る。
ビガン博士の説に添ってざっとホミノイドの歴史をたどると、多様性と柔軟な適応能力、移住への前向きな姿勢がヒトを生んだのだと実感する。それはもちろん、いまこの瞬間にもあてはまることだろう。
「David Begun」博士のサイトから、Scientific American掲載の「Planet of the Apes」がダウンロードできます。今回参考にした論文です。「京都大学霊長類研究所」「進化人類学分科会公開シンポジウム」などもご参考に。人類の進化関連はこれまで何度か取り上げてきました。「しっぽ [2003.08.25] 」「出アフリカ [2003.03.03]」「肌の色 [2003.01.16]」「脳の大きさ [2002.08.08]」「人類の母 [2002.06.17]」などをどうぞ。