もうすぐ3ヶ月になる三男にミルクをやる。視線がしっかりしてきて、飲みながらじっとこちらを見上げている。なんて澄んだまなざしだろう。きみの凝視に値するだけの父親だろうかと弱くなる心を励まし、そうだよお父さんだよ、お父さんがミルクをあげてるよ、なんて呼びかけている。
認知心理学の山口真美氏の研究によれば、彼の月齢なら、輪郭だけだった認知が、内側にまでいくようになった頃ということになる。目や鼻が見えてきて、なんだこれはなんて思っているだろうか。表情でいえばまず笑顔を、男女でいえばまず母親を分類するともいう。悔しいので「お父さんだよ」を繰り返しておく。話しかけるとにこっと笑顔を見せる、3ヶ月微笑というやつか、それがいとしくて、また見つめる。
いや、見つめているからいとしくなるのか。認知心理学の下條信輔氏による実験はそんな疑問を投げかける。ふたつの顔を見せ、魅力的だと思う方をボタンを押して回答してもらう実験だ。視線を計測すると、ボタンを押す1秒くらい前から、魅力的と思う方を長く見つめるようになっていた。つまり、そうと意識してボタンを押す前から、視線は答えを知っていたわけ。より丸い方を選ぶといった課題ではこの現象が見られないので、嗜好と視線の関係を示している。
それならと、ふたつの画像を交互に出し、一方を長く見せるようにする。と、その長く出された方を魅力的として選ぶ人が多くなる。まさに、見つめるから好きになっている。好きになるとより見つめる、こうして人は恋心を深めていくのだろうか。
そういえばと反省する。このところ5歳の長男とは、おもちゃや絵本を介したりして、つい並行した視線で会話していなかったか。いや、そもそも日常生活で、ぼくたちはどれほど他者と見つめあっているだろう。怒ったときににらむだけでは動物と変わらない、思いやりとともに、見つめたい。
山口真美氏にはその名も『赤ちゃんは顔をよむ』という書籍があります。「NetScience Interview Mail」でのインタビューが充実していて参考になります。「下條信輔」氏のサイトで、「The length of the gaze affects human preferences new study shows」として研究結果が報告されています。下條氏の書籍では『サブリミナル・マインド』がお薦め。
毎回楽しく拝見しています
子供が小さいときに可愛い可愛いで接していましたが 4ヶ月の乳児の発達の様子が分かったような感じがします
このことを知っていたらもう少し違った接し方をしていたかもしれません
>そういえばと反省する。このところ5歳の長男とは、おも
>ちゃや絵本を介したりして、つい並行した視線で会話して
>いなかったか。怒ったときににらむだけでは動物と変わら
>ない、思いやりとともに、見つめたい。
この文面に自分自身もドキッとしました、うちの5歳の長男にも最近怒ってにらむ事の方が多くなっている気がします。今日は早く帰って5歳の長男をギューと抱きしめたいと思います。
今回の「見つめる」を読んで、ちょっと不純なのですが、そういえば女性を口説くときもじっと見つめているとかなり効果的に口説けたり出来ますよね。
今後の戦等に参考になりました。(笑)
Somchai さんの書き込みにあまりに受けてしまったので(笑)、書き込みします。
目をそらされると何だか不安になりますよね、
でも見つめつづけられるのも居心地悪かったりしません?
「この人、本当は何が言いたいんだろう、何を期待してるんだろう??」って。
どっちにせよ、コミュニケーションは双方がどう受け取るかが鍵ですよね。
人と触れ合う機会が減り、人の目を見て話す機会が減っているこの世の中、
目を見て話せる相手が何人いるかが、
案外、自分の本当の味方の数だったりするのかもしれません。
子供が2人います。
そういえば・・・怒ってばかりです。おもいっきりにらみつけて・・・子供をもう少しやさしく見つめ抱きしめる、その大切さを、再認識させられました。
下條信輔氏の実験は先々週のサンデー・日経(サイエンス面)に載っていて興味深く読みました。ところで、人間の脳は他人の視線のちょっとした向きの変化もとても敏感に察知できるそうで、だから「目は口ほどに物を言う」のでしょうね。でも、男同士がじっと見詰め合ってたら「ガンを付けた!」ってなるのは…?
ところで、昨日の読売新聞の「雑学ブーム」という記事の中で小橋さんのコメントが出ていましたね。
来年9歳になる次女が4ヶ月のときのことを思い出しました。抱っこしてあやしますと、時折笑顔を見せてくれます。ところが、当時一週間ほど出張で会わなかったところ、彼女にとって私は「全くの忘却のかなた」。抱っこすると泣くのです。ショックでした。
「関係修復」までどのくらいかかったかの記憶は定かでありませんが、いまではすっかり仲良ししています。あのころがとても懐かしいです。
以前から楽しく拝見させていただいてましたが、初めて投稿します。
子育てにおける「見つめる」と「にらむ」という行為は前者は加点法、後者は減点法といったところですかね。
先日「鏡は先に笑いません」という本を読んだのですが、この本にはたくさん褒めることについてのいろいろな話が載ってました。
人に対して「見つめる」「褒める」という接し方はすごくお互いが幸せになりそうですね。
見つめなくてはならぬ時と、見つめすぎていけない時、視線については日ごろややこしく感じてしまいます。民族や男女、日ごろのエチケットとしても人それぞれに違いがあるように思います。ただ愛しいものに対する時だけは別。見つめていたい・・・ですよね。子供への視線から他者への思いやりにいたるまで、心の潤む今回のコラムです。