あれは何の映画だったろう。ディナーテーブルの中央に猿が出され、脳をスプーンですくって食べる。そんなシーンがあったのだが。カニならともかくと思ったのは、共食い的な行為を嫌ったからだろう。もっともかにみそは肝臓だと後になって知ったわけだが。
食人、カニバリズムの習俗については、長く議論されてきた。食人を伝える航海記に、売らんがための怪しい記述が多かったせいもある。カニバリズムの語源になったカリブ族の食人はコロンブスが報告したもの。異民族との出会いには、食人のうわさがつきものだった。もっとも、ヨーロッパ人から食人者と見なされた現地の人々もまた、白人が食人のためにやってくると信じたりしたし、奴隷をとるのは食べるためともみた。
新たな研究では、プリオン病から守ってくれる遺伝子を多くの人が持っているのが、食人の結果として適応進化したためではないかと指摘されている。パプア・ニューギニアのフォレ族には、葬儀の宴で死んだ近親者を食べる習俗があったというが、そのため、致死性の脳の病気が流行した。その結果、防御遺伝子を持つものが生き残ってきたと。
ほ乳類で共食いをするものにはライオンやクロコダイルなどが知られている。2003年に入って、マダガスカルで見つかった恐竜の化石から共食いの跡が見つかって話題を呼んだ。ただ、殺しあって食べたのか、死肉をあさったのかは定かでない。厳しい自然環境が背景にあったらしい。
フェリペ・フェルナンデス=アルメストの『食べる人類誌』に、こんな引用がある。食べておいしいとされたのはフランス人、次は「嬉しいことに」イギリス人。「オランダ人はさえない味で胃にもたれるし、スペイン人は筋が多くて、煮込んだところで食べられたものではなかった」。暗く屈折して、しかしユーモアを感じないでもない。食人にまつわる複雑な感情をうかがわせる。
プリオンと食人については「Balancing selection at the prion protein gene consistent with prehistoric kurulike epidemics」、日本語解説記事は「ディナーには脳みそを」です。恐竜の共食いについては「Dinosaur Cannibal Unearthed in Madagascar」をどうぞ。文中に紹介した書籍は、『食べる人類誌』です。
> そんなシーンがあったのだが
恐らく「インディ・ジョーンズ魔宮の伝説」だと思います(違うかな)。
集まったVIP達は美味しそうに食べますが、今作でのヒロインは卒倒してしまう。そんなシーンだと思います。
私もインディ・ジョーンズだと思います。
猿よりも虫(フナムシみたいなにょろにょろしたやつ)のほうが気持ち悪かった記憶が・・・
新井素子の『ひとめあなたに』を思い出しました
この中に出てくる複数の主人公が、一週間後に迫った隕石地球衝突を前にとる行動が描かれています。
その中の一人に、不倫している旦那をシチューの具にして食べようとする主婦がいます。
やはりこの人物が一番印象に残っている作品です。
いくら、目前に逃げようのない死が迫っていて、気が狂っているとは云っても……と思ったのを覚えています。
なるほど、インディ・ジョーンズ。確かに観てます。ありがとうございます。
それからごめんなさい、うっかりクロコダイルがほ乳類に読める表現をしていました。校正ミスです。訂正いたします。
いつも感心しながら拝見しています。カリバリズムの語源もよく分かりました。私は漠然と中世ヨーロッパだと思ってました。
サルの脳みそを食べる映画は、多分、「インディージョーンズ」ではありませんか。「魔窟」でしたっけ。うろ覚えですみません。スピルバーグは蛇を出すから苦手なんですよ。
それから雁屋哲さん(美味しぼ)の「究極の美味」にも登場します。これはサルから人間になります。
雁屋哲さんは脳みそを食べる話は結構、書いてますね。読むとうまそうです。
人間の脳を食べるのは「ハンニバル」で有名になりましたよね。あの名前は韻を踏んでるんですね。「カニバル・ハンニバル」とか言ってましたよね、映画で。
そういえば小松左京の傑作「凶暴な口」でも、人間の脳を食べますね。でもこれは自分のだから、共食いにはならないか。。。
いつも楽しく拝見させていただいてますです。
>ほ乳類で共食いをするものにはライオンやクロコダイル0
この段落、ほ乳類なのはライオンだけですね。
小橋さんらしくない一文だなぁ、と思い思わず書き込み。
いつも楽しみにしています。
いつの間にか(いい感じの間で)、驚いたり、
考えたりしています。
「インディジョーンズ」のあの場面、私も印象的でした。
食人といえば、マイケル・クライトンの昔の小説ですが、「失われた黄金都市(だったかな?)」、アフリカが舞台で、食人族にふれて、昔は食人のための市場もあった、とかいうのがあったような。。(ビジュアルにうかんでしまって恐かった記憶が・・)
いつも楽しませていただきます。
ところでクロコダイルは爬虫類ではないでしょうか?
共食いと言えば、グッピーなんかは、産卵用のケージに入れて、子供とすぐに分けなければ生んだ自分の子供を食べてしまいますよね。
あれはどういう理由なんでしょう。。
「サルの脳みそを食べるシーン」はヤコペッティの「世界残酷物語」という映画の中で紹介されていたように記憶しています。もしかしたら違う映画かも知れませんが、モンド映画と呼ばれる残酷な映像を集めたドキュメンタリー(ヤラセもあったかも知れない)が流行った時期がありました。