小橋 昭彦 2003年11月20日

 5歳になった長男が、ときどき「右ってどっちやったっけ」と確かめる。「お箸を持つ方」と古典的な答えをしつつ、左利きを考慮していないと自らを責める。辞書にはどうあるのかと広辞苑をあたってみて、「北を向いたとき、東にあたる方」とあって目からうろこが落ちた。北斗を見上げて、朝日に白む方向が右。右を思うたび宇宙と一体化できるこの説明はすてきだと、しばし感動する。
 利き手を調べるにはどうするだろうか。ボールを投げるというのがよく使われる方法。消しゴムを持つ手、絵を描く手といった調べ方もある。では利き足はどうだろう。ボールを蹴る足、階段を最初に踏み出す足。利き目はどうか。このあたりから少々難しくなる。望遠鏡をのぞく目、鍵穴をのぞく目。利き耳となるとはたしてあるのかから議論になるが、他人の心音を聞くために胸にあてる耳などでそれと判定される。まあしかし実際には、右か左か二分されるのではなく、連続的に移行するものと考えた方がよいようだ。
 右と左といえば、今では右の方が優位にとらえられている。役立つ部下は右腕だし、自分より優れたものは右に出る。こうした傾向は広く見られるようで、英語のrightも「正しい」という意味を持つ。古く日本では逆に左が優位で、右大臣よりは左大臣の方が偉い。もっとも右か左かを論じるとき、それ自体を基準にする本位呼称か、向かってを表す対面呼称かは明確にしないといけない。
 彫刻家の城田孝一郎氏の文章に、現代は対面呼称が多いという指摘があって、はっとする。そういえばある辞書に「左前」は相手から見て左の衽(おくみ)が上になることと説明されていたが、実際には外側の衽が自分から見て左胸で前になるという、本位呼称だったかもしれない。辞書に対面呼称が使われるのはよしとして、日常生活において、相手の身になった表現が少なくなっているとしたらさみしい。

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18 thoughts on “左と右と

  1. そういえば、右と左では文字は似ていても書き順も違いますね。

    没ネタ。直感の右脳、論理の左脳、働きの差は分子の違い(九州大学・伊藤功助教授ら)? チンパンジーとヒト、22番染色体の遺伝子の違いは15%(理化学研究所など)。神経を動かす通り道の構造解析成功(理化学研究所など)。15世紀には妊婦風シルエットがファッショナブル。呉服商の出張販売など、日本経済の礎は江戸時代に。

  2. 最後の2行目の魔術師さま
    そうですよね子供に「右」「左」と教えるのは迷いますよね。うちも5歳の長男が最近興味をもっているようでよく質問されます。「これとこれどっちが大きいか?」「こっち」「こっちじゃ分からないから右か左で答えて」「じゃあ右」「右ってどっち」・・・
    私自身が左利きでおばあちゃんによくしかられペンと食事は右利きにしました。力仕事は左、細かい仕事は右で使い分けています、ちなみに右手に鉛筆、左手に消しゴムを持ち並行作業が可能です。(最近知ったのですがこれって特技みたいです)
    今後とも「雑学.COM」を楽しみにしています。
    同世代38歳のサラリーマンより。

  3. 「お箸を持つ方」ではなく、「あなたがお箸を持つ方」とすれば問題が無くなりますね。
    ちなみに利き目は一つのものを見て、左右の目を交互にかくし、ものがずれなかった方が利き目です。

  4. こんにちは。利き手、利き足のお話が出ていましたが、利き目の調べ方はいたって簡単です。両目を開けて少しはなれた1点を指差してください。そのまま動かずに片目を閉じてみてください。両目で指差した点と片目をつぶった時に指している点がより近いほうが利き目です。右と左で意外と違う点を指しているものですよ。
    私は利き足のほうが疑問を持っています。階段を上るとき、上手に片足になれる軸足と、踏み出す足、どっちが利き足なんでしょう?
    しかし、辞書の説明は素晴らしいですね。
    これからも目からウロコの情報を期待しています。

  5. 「北を向いたとき、東にあたる方」
    それでは、北はと調べると、
    「日の出に向かって左の方角」大辞林(国語辞典)
    東はと調べると、
    「太陽の出る方角」大辞林(国語辞典)
    そうすると、右というのは
    「日の出に向かって左の方角」に向いたとき、「太陽の出る方角」
    それでは、左はというと、
    「北に向いていれば、西にあたる側」大辞林(国語辞典)
    そして、西はというと、
    「太陽の沈む方角」大辞林(国語辞典)

    結局、「日の出に向かって」というのが重要なのですね。でも、地球上ではなく宇宙ではどう説明するのでしょう……

  6. お邪魔します。論題から外れちゃうのですが。。。
    自分が右と左をいつ頃覚えられたか記憶ありません。
    「お箸を持つ方が右手」という教え方をされていたのは確かですけれどね。
    でもタクシーに乗った時に咄嗟に右と左を間違えて言ってしまいます。慌てて「あっ、違う、左です」とか言い直します。
    でも私に教えた親は、TVでも町でも「あっ、あの人、左利きだ」とか、物凄く利き手に敏感ですし、左右を間違えないのです。
    何故だか不思議になることがあります。
    その親は、かなり厳しく右手でお箸を使うように教育されたらしいです。
    結局、宇宙に行っても誰かがそんな体感で教えるのじゃないでしょうか。どうなんでしょうねぇ
    方向オンチなこと書いてすみません(^^ゞ

  7. ちなみに、舞台の「上手」「下手」は、本位呼称です。
    客席から見ると右側が「上手」ですが、
    舞台上の役者にしてみれば、左が「上手」です。
    (ご指摘の通り、日本は古来、左側が上位なので)

    折口信夫は、演劇は本来、神の代理である役者のためにあるもので、
    観客は、単に神事の「ご相伴」にあずかっているだけだと指摘しています。
    そのためか、舞台の上手、下手の呼称は、役者本位のようです。

  8. 「左前」の「前」とは「手前」のことであり、
    「左前」とは自分から見て左の衽が手前に来ること、と私は習いました。

  9. tak-shonaiさん、ありがとうございます。そうそう、舞台もそうですね。下調べのときにそのことも連想しつつ、書くときになったら忘れていました。お恥ずかしい。

    かみゅっさん、ありがとうございます。なるほど、すごく説得力があります。いずれにせよ、本位呼称ですね。

    また、ヴェスパさん、やまむら ただふみさん、ありがとうございます。なるほど、利き目はそうやればわかるんですね。勉強しました。

  10. 方向オンチさん
    僕も元々左利きで、左右を口に出して言う時にしょっちゅう間違えます。ずっと不思議だったんです、なぜでしょうね?
    頭の中では「あっち(例えば右)」と分かっているのに、無意識に口を出る言葉は「ひだり」。車の助手席やタクシーに乗っていて、反対に曲がられてしまってから「え!なんで?…あーまたやってしまったのか!」と。
    ちなみに東西を間違える事は無いし、散歩や山歩きでも方向感覚は正しいことが多いです。

  11. はじめまして。
    左右の識別ですが、東西南北でやると「北ってどっち?」ということになりませんか?
    私は「時計の文字盤を見て、12時が真上に来たとき、3時方向が右、9時方向が左」としています。

  12. 方向オンチさん、実は私も方向オンチなんです。

    右はわかるんですけどね、左も分かるんですけどね、
    例えばお店に入って出てくるとどっちから来たのか分からなくなってしまうんです。
    つまり・・・とっても本位呼称!?(いや0、意味がちがいますよね、すみません)

    外国に行くと左利きの人によく出会います。なんでだろう!?とずっと不思議だったのですが、あるとき「日本人はすぐに矯正するからね」と聞いて納得。人と同じを重んじる日本では左利きの人の多くは親に怒られた経験があるのでは?

  13. yu-jiさん、MAXさん、ありがとうございます。
    何だかとっても心強くなりました。
    そう、出口。私は地下街とかです。一瞬分からないです。
    乗っている電車がある時突然「えっ、逆方向?」みたいな錯覚もあったり。
    時計で考えるのはすっきり!
    マウスになる前、キーボードに10年馴染んでいるうち、
    右利きのはずなのに、左手でお箸を持って、普通に食べていることに気づいて驚いたこともあります。
    本当は左利きだったのかなぁ。
    右・左、上手、下手、本位呼称。感覚的なこと。
    たくさん広がって楽しいかったです。
    小橋様、本当にどうもありがとうございました。

  14. 私は左利きですが、右手もよく使います。よく利き手にこだわる人が多いですが、
    私は自分が使っていて違和感がないならどちら
    でもかまわないと思います。だってせっかく
    二つ手があるんだから、使わなきゃ損でしょ?

    宗教的にも左は「悪」に例えられる場合が
    多いですよね。結婚指輪を左につけるのは、
    悪いモノが左から入ってくると信じられていた
    ので、左につけて身をまもる為だそうです。
    英語でもleftの付く言葉でいい表現はありません。でも今回「日本は古来から左が上位」と聞いて、ちょっと嬉しかったです。

    ちなみに、漢字の”右”と”左”についてですが、
    昔本で読んだことがあります。少し忘れてしまい
    ましたが、洞窟に神を祭るところがあって、そこに入る前、右には「口」の形をした、左には
    「エ」の形をした道具を持ってお辞儀をしてか
    中に入り色々やってたらしいです。だから
    「尋」という字ができて「神を尋ねる」という
    意味になったそうです。
    えーっとたしか白川静さんの本だったんです
    けど、高校生のときTVで見て感動して本を
    読んだんです。かなり難しかったけど、頑張って
    最後まで読みましたがあんまり憶えてない(-_-;)
    もう一回借りて読み直してみます

  15. >うり助さん
    鏡は左右反対に映っているのではありません。
    手前と奥が反対に映っているのです。
    — 学者的回答

    試しに、寝転がって鏡を見てください。
    右手と左手が逆に映っているように見えませんか?
    でも、それは上下反対に映っていることになるでしょう。

    鏡は本質として手前と奥の逆転なんですが、人の脳が
    認識するときに、『左右反転だ!』と思ってしまうようです。
    それだけ、ヒトにとって『左右』というのは基本的で
    重要な、もっとも身近な知覚なんでしょうね。

  16. >うり助さん
    >M” s.Mさん

    鏡は、右にあるものは右に、左にあるものが左に、
    上にあるものは上に、下にあるものは下にそのまま映っているのではなくて?

    人と対面しているときに、左にある手が、その人の右手であるとわかっているから、
    鏡を見たときに自分の左手を右手と錯覚しているだけなんではないのでしょうか。

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