自分たちの宇宙の年齢が定まる時代に生きていられるとは。観測衛星が取得したデータを解析した結果、宇宙の年齢は137億歳とわかったというニュース。宇宙は平らで、4%の見える物質、23%のダークマター、73%のダークエネルギーから構成されているともいう。大半は目に見えないわけで、それは何かという謎もまた生まれた。
先だって並行宇宙について調べていて、もっとも心に残ったのは、観測可能な宇宙は一年に一光年ずつ広がっているという事実だった。ぼくたちは光が届く範囲しか観測できない。一年経てば、一光年分遠い光が届く。だから一年後には、半径一光年分、ぼくたちの宇宙は広がっている。ただ生きているだけで、ぼくたちの宇宙は広がっているという事実に、なぜか勇気づけられていた。
そしてふと、谷川俊太郎の詩を思い出す。万有引力に、ひき合う孤独の力を重ねた詩。宇宙の広さにくしゃみをするという、無辺と日常をつなぐ終行だった。読み返して、二十億光年の孤独という題名であったことに驚く。この詩が書かれた当時、宇宙の年齢はそのくらいと考えられていたのだろう。その後推定は精度を増し、ぼくの心の中で「二十億年」も年をとっていたのだった。
イームズの短編映像作品に「パワーズ・オブ・テン」というのがある。芝生に寝転ぶカップルを映した1メートル四方の映像が、10秒ごとに遠のいていく。10秒後に10メートル四方、20秒後に100メートル四方、都市を囲む四角、地球を囲む四角。10のべき乗で広がっていって、観測可能な宇宙をすべて含むのは何秒後か。じつは、5分も経たないのである。映像はその後逆に10分の1ごとに皮膚細胞の中に入っていく。原子にいたるまで3分近く。ぼくらを包む大宇宙と、ぼくらの抱える小宇宙をつなぐ作家の感性。
一年で一光年広がる宇宙の中で、ぼくたちは想像力をもって、自らを広げていくことができる。天の川に恋を重ねる、今宵。
WMAPの観測結果については「The Age of the Universe with New Accuracy」をご参照ください。また、国立天文台の「宇宙の年齢は137億歳?!」とそこにある解説も詳しいです。宇宙論といえば、日本の「佐藤勝彦」ですね。インフレーション理論の提唱者の一人。ちなみに、宇宙膨張の効果を織り込めば、観測可能なもっとも遠い場所は約420億光年先だそうですが、宇宙の年齢との関係が実感的にわからず、コラムでは触れられませんでした。イームズの映像はDVD『EAMES FILMS』で体験できます。イームズは家具で有名ですが、映像作品も凝っています。谷川俊太郎の「二十億光年の孤独」は『谷川俊太郎詩集』などに所収。お薦めです。
「パワーズ・オブ・テン」、DVDで見ました。
子供のとき、科学への扉を開いてくれた作品なので、映像が位相を飛び越えている間、自分は時間を飛び越えているような気分でした。
一緒に見た息子(6歳)には早すぎたようです。年に1度、見せ続けようかな。
(日本語吹き替え版は無いのだろうか。)
先日、一光年について、友人と考えてみました。一光年分の距離を時速100キロメートルで進んだ場合、1232.876712年掛かる、という答えになったのですが、正解でしょうか?