鳥類の一夫一妻について、9割は浮気・不倫をすると聞いたと指摘をいただく。調べてみると、出典は米サイエンス誌98年9月25日号。鳥類の子のDNAを調べたところ、一夫一妻制とされる約180種のうち、夫婦だけのDNAを引き継いでいたのは10%とある。一瞬、鳥類の一夫一妻制が否定されたかと思ったが、冷静に読み返せば、一夫一妻制のなかでも9割の種で逸脱が見られるという話だ。
ぼくたちは、ときに数字に目を奪われて正しい方向を見誤りがちだ。単純な例、返信をくれるのは3回に1回という表現と、返信をくれるのは3.1回に1回という表現を比べてほしい。おそらく、小数点のある後者のほうが信頼性が高くとられる。
続いて、これはちょっと知られた事例だが、あなたが勤め人とすれば、一年間のうち3カ月しか働いていないことを示す。まず、1日の睡眠時間を8時間として、365倍して年間122日は仕事をしていない。食事に1日3時間かかるとして、同じく年間46日が省かれる。週休2日なら年104日が休日。ということで、365日からこれらの合計をひくと、残り93日。ほら、あなたの仕事時間は3カ月しか残っていない。手順の誤りに気づかれたろうか。
冒頭の例もそうだが、たとえ誤りがなくても勘違いしがちなのがぼくたち。たとえば日本の家庭のうちサンタクロースが訪れた家が去年より倍増した、と言われたらどうか。サンタが大盤振る舞いするようになったと感じるが、去年が1軒だったなら今年はわずか2軒。サンタの気まぐれの範疇だ。
統計を読んだり扱うときの心がけを紹介した定番の書籍に、ハフによる『統計でウソをつく法』がある。原著の出版は1954年で、今も人気が高いロングセラーだ。現代でも、マウスや少人数のサンプルでの結論による健康情報に振り回されることが少なくない。半世紀を経ても、数字の魔力は健在らしい。
『統計でウソをつく法』は定番です。新刊でも、『統計はこうしてウソをつく』などがありますね。サイエンス誌の記事は「A New Look at Monogamy」を。なお、「諫鼓を打て」内の「数字でウソをつくな!」はおもしろかったです。
没ネタ。同時多発テロ後の空港封鎖で、飛行機雲と気象の関係にてがかり(日経サイエンス10月号)。漁業資源を守るため小さな魚をとらないようにしていることで魚本来の大きさも小さくなっている(日経サイエンス11月号)? 修正ニュートン力学(日経サイエンス11月号)。minuteはラテン語の最初の小さな分割、secondは二番目の小さな分割(日経サイエンス12月号)。基本単位のうちメートル、ルーメン、アンペアは秒を用いて定義されている(日経サイエンス12月号)。
統計でウソをつくというのは、日常茶飯事ですね。
新聞はもちろん、政府刊行物や学者の論文等々。
ウソはつかないまでも、一部のデータを隠すことで、
事実を歪めてしまうことはよくあります。
自分も統計を使うので、気をつけたいものです。
統計で嘘がつけるのはかなり高等な人でしょう。私たちが日常数字を扱っていて陥りやすいのは、数字のために間違ってしまう、ということのほうが多いと思います。数字のバックにある事柄の関係をちゃんと把握していないと、見かけの動きに惑わされてしまいます。
試験の成績(点数)のおかげでどれだけ多くの子供たちが、見誤られている事か。気をつけたいものです。
>一瞬、鳥類の一夫一妻制が否定されたかと思ったが、冷静>に読み返せば、一夫一妻制のなかでも9割の種で逸脱が見>れるという話だ。
これって 180種の中の9割に逸脱がある。
つまり 18種だけが一夫一妻制 という意味では
ないのですか?
よくわからんです・・・・
tamaさん、すみません「逸脱」という表現がややこしかったでしょうか、「例外」といっていいかもしれません。
たとえば新聞各社を調べたところ9割の会社で訂正記事の経験があったとします。でも、だから9割の新聞社がいいかげんで信用できるのは1割とはいえませんよね。どんな会社でも間違うことはある、とはいえても。
今回言いたかったのは、そういうことなのです。その数字がほんとうに指し示しているのはどういうことかをつかまないといけない、と。
ただ、前回のコラムで触れたように、一夫一妻の定義がおぼろなので迷うところもあります。日本の夫婦でも浮気や不倫があるようですが、日本人は一夫一妻ではないとはいえません。では、すべての夫婦間で浮気や不倫があったとするとどうなのでしょう。それでもやはり一夫一妻制という気がします。鳥類ではどうなのでしょうか。ややこしいですね。
鳥の件は納得です.
どーも アタマが 固いですな。
さて 問題です
殺人事件がおこりました
Aさんが 密室で 首吊り状態で死んでいます
かれは 金貸しで・・・・
1000人以上に恨まれていました
うんぬん・・
さて 自殺か他殺か?
みたいなものですね
3.1回と3回も 100倍すれば わかりました
次の1年間の労働時間は 休日分と 休日分の睡眠時間がラップしているが正解ですかね
この手の言葉と数字のマジックは 怖いですねぇ
簡単にだまされちゃいました
では
いまごろこんな前のにコメントしますが(メールボックスをあさっていたら出てきたので)
> 手順の誤りに気づかれたろうか。
手順のことなので、休日を引いてから睡眠・食事時間を引かないといけない、ということなのかもしれませんが(この部分は明らかな手順間違いですが)、そもそもこの方法で出てくるのは「時間」であって「日数」には即換算できないものであるというのが落とし穴なんじゃないかと思うんでした。