いまさら茶髪という表現を使うのもためらわれる。人ではなく、ライオンの話なのである。ライオンといえばブロンドのたてがみがシンボルで、金色に髪を染めたサッカー日本代表選手の活躍を報じた記事には「ライオンヘア」と表現されたりもした。ところが、米ミネソタ大学のペイトン・ウェスト博士らの研究によると、メスは黒みがかったたてがみのオスを好むというのである。
オスのたてがみは、男性ホルモンのテストステロンの血中濃度が高いと、長く、また黒くなる傾向がある。研究グループはタンザニアなどで観察を続け、このほど実物大の模型を作って実験をした。すると、メスは10回のうち9回までブロンドではなく黒髪のオスの模型に近づき、オスは黒髪ではなくブロンドに近づこうとした。メスとしては総合的な栄養状態のよいことを示す黒髪のオスの方が子孫を残すために望ましい相手ということになるし、オスにとっては弱いオスといたほうが自分が有利になる。そんな背景があるのだろうと研究グループは推測している。
たてがみも子孫を残すという視点で説明できるわけか。そう思い、ふと竹内久美子氏の著作を思い出したのだった。男性の局部があのような形である理由とか、若い女性に多いダイエット願望のゆえんとかを、遺伝子を残すための精子間競争の視点から説明する。
並行して思い出したのが、精神分析家の岸田秀氏の「性的唯幻論」。人間を性本能が壊れた動物として、性欲をもたらすために幻想を作り上げたのが人類文化と説明している。この日常は、不能克服のための幻想なのか、あるいは精子のたくらみか。
もてるために黒髪に戻そうとはいわない。人間とライオンでは違う。黒髪のライオンは体温が高くなり、精子のためにはリスクが高いとも指摘されている。リスクをおってまで自分をアピールするライオン。街行く茶髪はどうだろう。
Peyton West博士のライオン研究については「The Lion Research Center」をどうぞ。発表論文はScience誌の「Cool Cats Lose Out in the Mane Event」です。竹内久美子氏の著書は『BC!な話』を、岸田秀氏は『性的唯幻論序説』をどうぞ。
私は黒髪が好きです。自分の髪も、他人の、もちろん男性の髪も。
ただし、日本人の場合。
勿論主観ですが、どんなに彫りが深くても、日本人に茶色い髪や金髪は似合わないと思っています。今まで似合っている人を一人でも見たことがありません。不愉快なのは数多く見ますが。
ただ、日本人でも生まれつき身体の色素が薄い人は、髪の色も薄く、それが自然で似合っています。子供の頃あこがれたものでした。
タカラジェンヌが金髪でも違和感が無いのは、彼女たちそのものが「非日常」の夢の世界だから。
髪を染める理由が「他人と同じはイヤ」から、黒髪が珍しくなった現在は「他人と同じでなきゃ不安」に逆戻りしたのでしょうか?
生物は、それぞれに適した「色」を授けられているのだな・・・と改めて感じるここ数年の染髪ブームです。
>>街行く茶髪はどうだろう。
「若禿のリスクを負ってまでもてようとしているの」
と見れば、人間もライオンも同じかと( ̄∇ ̄)
(ライバルに対する威嚇ってのも似てますね)