1日にすれば、という考え方をときどきする。ぼくたちの遠い祖先が日本にやってきて縄文時代が始まった約1万2000年前を午前零時とし、現在を1日の終わりとする。1万年弱続いた縄文時代は、午後7時半までを占める。弥生時代が午後8時半まで、9時半になって平安時代が始まり、明治維新がようやくいまから10分あまり前。
同じ方式で生命の歴史をあてはめると、生命誕生の午前零時から始まって、午前9時ごろ、光合成を行う生命が生まれる。生命が多様性を探ったカンブリア紀が午後9時から始まり、そこから進化はめざましくなる。恐竜が存在したのは午後10時半からの1時間くらい。ほんの30分前に恐竜は絶滅、人類の誕生はわずか1分前のこと。
社史発行を手がける出版文化社によると、このところ社史を刊行する企業が相次いでいるという。戦後に創業した企業がちょうど50周年を迎え、50年史をつくる時期となっているのだ。
経団連で社史の研究に取り組んでいる村橋勝子さんによると、日本企業に本格的な社史が誕生したのは1900年代に入ってからで、これまで1万3000点あまりが刊行されてきたのだとか。ピークは1980年代で、明治期に創業した企業の100周年、昭和初期創業企業の50周年が重なり、戦後企業は30周年となった時期。内容は多岐にわたるとはいえ、やはり明治の起業家や、戦後の焼け跡から会社を興したエピソードには感じさせるものがあるという。
1日にすれば年表をたどるとき、驚かされるのは黎明期の長さだ。縄文時代の長さ、あるいはカンブリア紀の生命の大爆発に至るまでの長さ。ほんとうの意味でぼくたちに身近な姿が現れるのは、もう日も沈んだ午後9時以降なのだから。会社だって、創業時の志なしには生まれなかった。夜遊びばかりじゃなく、はじまりのころのことを、ときには振り返ってみる。
社史については、村橋勝子さんの『社史の研究』をご参照ください。また、「社史の泉」も参考になります。