胎児の超音波画像は、成長していると実感できて、親にとってありがたいものだ。ところがこれが胎児にとって大騒音だと、米メイヨー・クリニックの研究者が指摘している。人間の耳には聞こえないけれど、羊水を通じて胎児の耳を震わせる。100デシベルという地下鉄並みの騒音に匹敵するのだとか。もっとも、伝わる範囲はごく狭いから、ちょっと身をよじれば逃れられる。画像を見ているとき胎児が動くのは、案外「うるさいなあ」って逃げているのかもしれない。
胎児と音といえば、母親のおなかに口を寄せ話しかけることもよくした。胎児がけり返してくる、聞こえているかどうか、偶然かもしれないけれど、その反応が嬉しくて、胎児と通じあった気持ちになる。そんなとき、人のコミュニケーションは言葉だけじゃない、さまざまな手段で情報を交換するのだと実感する。
大人同士でも、言葉だけを交わすより、うなづいたり、身振りで反応したりした方が、会話がスムーズに流れる。「リズム同調」と呼ばれる現象だ。会話だけでなく、気の合う仲間と歩いていると歩調が自然に揃うように、リズム同調が見られる場面は多い。うなづいたりの反応を返す癒しロボットや、歩行音を利用した高齢者の歩行介助など応用も進んでいる。
この春から子どもが保育園に通うことになった。送り迎えの道は、つくしをとったり、花を摘んだり、歩調は自然とゆっくりに。朝送るときにつぼみだった道端のたんぽぽが、帰るときには咲いていて、それが翌朝はまた小さくなっている。開いたり閉じたりを繰り返し、そうしてある朝、白い綿毛が黄色い花びらを押し上げようとし始めていることにふと気づく。
たんぽぽがそんなふうに日々を送っているなんて、恥ずかしながらこの年になるまで知らなかった。きっとこれまで、大地や草花とは違うリズムで生きてしまっていたんだろう。地球にとってはさぞ騒音だったろうな。そんなことを思って、大切なことを教えてくれた小さな手を、ぎゅっと握り返す。今朝の、できごと。
リズム同調については、「心が通う身体的コミュニケーションシステム E-COSMIC」「渡辺研究室」をご参照ください。また、「InterRobot」もどうぞ。超音波の胎児への影響を調べたのは、米メイヨークリニックの「Mostafa Fatemi」博士です。
今日の没ネタ。ろうの女優「誰もいないときの『シーン』に音が無いと知ったときはびっくり(朝日2月10日)。カメレオンの故郷はマダガスカル島(朝日2月14日)? 室町時代以来500年の歴史のある「知らなんだ」の表現、発祥の関西でも死語(朝日2月5日)。103世紀に中国の後漢からもたらされたとみられる最古の重り発見(朝日1月23日)。
胎児が100デシベルの騒音の中にさらされるとは知りませんでした。幼児は胎内にいた頃をよく懐かしく思うから、似た環境におくと落ち着くといいます。そこで子供に、この100デシベルという騒音を再現してみたいとも思うのですが、さてさて、超音波を胎児はどう騒音と感じるのだろう・・・?骨髄に反応させることができるのか?ちょっと調べてみる気になりました。
ところで、このアメリカの先生、経歴をみると面白いことやっていますね。