小橋 昭彦 2002年1月10日

 届いた賀状の図案の数々を見ていて、なるほど今年はうま年だったかとあらためて気づく。昨年12月には奈良県桜井市の箸墓(はしはか)古墳を調査していた桜井市教委から、周濠(しゅうごう)で見つかった遺物が木製のあぶみだったと発表された。うま年へ向けてのはなむけだったか。はなむけがもとは「馬の鼻向」と言われていたとは、あらためて説明するまでもないだろう。
 箸墓古墳のあぶみだけれど、年代としては4世紀初めのものとみられるといい、事実とすると、日本での乗馬はこれまでの説から半世紀から1世紀近くさかのぼる時期に始まっていたことになる。なにせ魏志倭人伝には3世紀末の日本について「牛馬なし」と記されているのだ。箸墓古墳には邪馬台国の女王卑弥呼の墓ではないかという説もあり、弥生時代の終わりとともに強力なくにが出現し、乗馬がはじまった、あるいは乗馬とともに強国が出現したといった想像もふくらむ。
 いや、想像にはしってはいけない。大陸の騎馬民族が日本を征服したという説は現代では否定されているわけだし、出土品をたどれば長崎の五島列島で1世紀のものと考えられる馬の歯が出土している。ごく珍しいものだったと考えられるにしても、弥生時代から馬が日本に入ってきていたのはたしからしい。
 もうすこし歴史をさかのぼると、岐阜県可児(かに)市では、1700万年前の「うま」の化石が見つかっている。アンキテリウムという名の、これが日本最古のうま。もっとも指は3本で、現在では絶滅した種だ。じつは馬の指は進化するごとに4本から3本、そして1本へと減ってきた。角もない、牙もないから、せめて逃げ足を鍛えようとした結果とされる。
 なにかと不安な今年。逃げ足を鍛えるうま年なんてわけにもいくまいし、5本指があるぼくたちとしては、ぜひどっしりかまえて、せまるもろもろに対処したいと思うのだが、さて、そんな呼びかけも馬耳東風か。

3 thoughts on “うま

  1. 日経ビジネスEXPRESSに行ってきました。
    たまたま、日経ビジネスは購読しているのですが、日経らしくなくてたどり着くまで結構時間がかかってしまいました。
    またひとつ楽しみが増えました。
    交通渋滞の環境面やマイナス経済効果とか、
    高速道路が開通したときのプラス効果とかが、掲載されたりすると面白いなとか思ってます。
    期待してます。頑張って下さい。

  2. うまい話の危ない年明けですね。
    まさにどっしりと構えて、人生を考えるときでしょう。

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