傘の起源は日傘にある。雨傘が登場したのはせいぜい17世紀頃のことで、古代において傘といえば日傘。
地球も、日傘をさしている。その正体はエアロゾルといわれる気体中を浮遊する微小な粒子だ。気象学的には霧といわれたり、もや、あるいはスモッグといわれたり。工場から出る硫黄酸化物からできる微粒子のような人為的なものと、火山の噴火のような自然によるものがある。
エアロゾルはそれ自身で太陽光を反射もするし、雲の核となって、間接的に太陽光を防ぐ要因にもなる。こうして地球の温度を低下させる。これが日傘効果だ。1991年のフィリピンのピナツボ火山の噴火が、翌々年の日本の冷夏を引き起こしたなんて説もある。
地球の日傘が及ぼす効果について、東京大学機構システム研究センターなどのグループが人工衛星を用いて調査した。産業革命から現在までの約250年間に排出された大気汚染物質微粒子による冷却効果は、約0.6度(日経12月7日)。同時期の温室効果ガスの増加による温度上昇の半分程度の大きさにあたるとか。
つまり、こんご発展途上国の汚染対策が進むと、日傘効果が小さくなって地球温暖化がさらに進むと予測される。あちらたてればこちらたたず。地球環境は複雑で奥深い。いや、複雑にしているのはぼくたち自身か。
日傘効果については、今回の研究に携わった「中島映至教授のサイト」をご参照ください。。「気候システム研究センター」もどうぞ。地球温暖化と日傘効果の関係については、「グローバル環境教育」がやさしいです。エアロゾルは「音響光学フィルタ」のように地上からの観測もされているようです。また、「日本エアロゾル学会」をご参照ください。
ちなみに今日のコラムにならなかった没ネタ。
水虫のサラリーマンは約4割(朝日12月7日)。細菌が感染するとそのDNAを認識して免疫のスイッチを入れるしくみ解明(朝日12月7日)。
上前淳一郎氏の「複合大噴火」という本によると、1783年(天明3年)に浅間山とラキ火山がそれぞれ噴火。
日傘効果が複合して地球規模の異常気象を招き、天明の大飢饉、田沼意次失脚やフランス革命の遠因になったという説があるそうです。
日傘効果が田沼意次失脚やフランス革命の遠因。おもしろい説ですねえ。
コラムで紹介できなかった数字ですが、1963年のバリ島・アグン火山噴火のときには、日傘効果で世界各地の直達日射量は約3%減少し、北半球の平均気温は約0.3度低下した、というのがあります。
日傘か。
かといって、地球温暖化に歯止めをかけるべく発展途上国の汚染対策を
ゆるめるのは本末転倒。汚染は汚染なのだから(その影響は単に地球の
温度だけでない)。温度という数字に振り回される前に、考えるべき事
はたくさんある。
それにしても・・・ちょっと地球がくしゃみをしたりとか、微熱があっ
たりとかいうのが、人間にとっては大事件ですね。つくづく、人間は
なんて小さいのだろうと感じます。相対的なものですけどね。