平成に入る頃、尿を飲む健康法が話題になった。科学的根拠に乏しい話だったが、とりあえずは砂漠や海洋で飲料水が欠乏したときのサバイバル術として記憶している。役立てたことはないけれども。
令和に拡がりそうなのは、糞便移植だ。他人の便を取り込むことで、体質改善や病気の治療に役立てる。
そもそも人間はマイクロバイオームと呼ばれる細菌叢と共生している。とりわけ腸は第二の脳とも呼ばれ、多くの細菌がいる。腸内フローラという呼称を聞かれた方もいるだろう。
細菌叢には個人差がある。自分の腸内の細菌叢をいったんきれいにし、その後他人の糞便を取り込むことで理想的な細菌叢を腸内に培養しようというのが糞便移植。
尿療法と違って糞便移植は科学的な根拠が揃いつつある。たとえば順天堂大学病院などでの研究では、潰瘍性大腸炎の治療法として有効であるとの結果が出ている。
減量のため胃の切除手術を受けた患者の腸内マイクロバイオームが変化し、それが食欲の抑制と関係しているとする知見もある。ダイエット用の糞便摂取というのも冗談ではないのだ。
糞便を食べる必要は無い。現在は浣腸ないし内視鏡といった方法が主だが、そのうち細菌叢をカプセルに詰めてサプリのように飲む時代もくるだろう。
腸内細菌と一口に言うが、マイクロバイオームが持つ遺伝子の数は300万以上と、ヒトが両親から引き継いだ遺伝子の100倍以上に及ぶ。個人差もあり、どのような組み合わせで移植すれば効果が出るのか、奥が深い。
やがては検便によって集められたビッグデータをもとにAIによって解法が見つかるようにもなろう。
芥川龍之介「好色」は恋する人の糞(まり)を盗む話だった。あるはからいで悲劇に終わるのだけれど、これまで罵詈だった「くそ」が宝になる時代が、今ほんとうに目の前に来ている。
順天堂大学のサイト『腸内細菌療法の臨床研究について』及び論文「糞便移植法の現状と将来展望」をまずはご参照ください。
日経サイエンス誌の記事「胃腸と脳の意外なつながり」「減量手術が明かした 腸と脳の関係」も参考にしました。
このほか、「腸内フローラ最前線」「他人のうんちで病気を治す」「腸内の細菌カタログが完成すれば、「大便が薬になる」日がやってくる」「他人のうんちで病気を治す?」なども参考になります。
ひぇ〜!
まぁ、有効なら皆さん飛びつく…でしょうね。
純粋に楽しみです。
いやぁ、ぜったい市場になると思うんですよね(^^
出資したい(笑