昨年のリリースになるけれど、上智大の研究者らがネコも自分の名前を認識しているという実験結果を発表していた。
ぼく自身はペットを飼っていないので実感として分からない。ネコ好きにとっては当たり前と思われる結果なのか、あるいはわがまま勝手でどうかなぁなんて思われるのか。
イヌが名前を聞き分けるのは知られている。これもやはり昨年になるが、騒音の中でイヌは自分の名前を聞き分けるという研究報告もあった。
人間の場合でも宴会などのにぎやかな場で、どこか別の席で自分の名前が出るとふっと聞き耳を立ててしまうことがある。いわゆる「カクテルパーティ効果」と呼ばれるもの。これがイヌでもあるという話だ。
まあイヌとネコの比較は少々酷だ。狩猟時代から人間の良き友であるイヌに対して、ネコが人間の友になったのは穀物を栽培し始めた頃から。エジプト文明からとしてもせいぜい数千年の歴史で、イヌとは1万年以上の開きがある。
研究論文にしても、イヌを研究した論文は数あるけれど、ネコについては少ない。
そんなネコだが、録音した名前を聞かせて行った実験で、自分の名前に反応することを確かめたというのが冒頭の研究発表。
名前を録音して聞かせるのはこの種の実験では標準的な方法のようで、飼い主の存在など呼名以外の要素に左右されないようにするためだ。
そういえば15年ほど前、イルカを対象にした研究でも同様に録音した音声で行っていた。
そしてこのときは、どうやらイルカはその鳴き声で、それぞれの名前を呼び合っているらしいとあった。集団の中で個体を呼ぶことができるわけで、ネコやイヌが人間によって名付けられた名前を識別する以上の驚きがある。
イヌやネコが固有名詞を聞き分けるのは、人間との共生を経た進化の結果だろう。イルカはどのような進化的必要から固有名詞を持つに至ったのか。
それを言えばなぜ人間は名前を持つのか、という話にもなるのだけれど。
ネコの名前についての研究は、「ネコは自分の名前を聞き分ける~ヒトの発する「自分の名前」と「他の名詞」や「同居ネコの名前」を区別する能力を実験的に証明~」でどうぞ。原論文は「Domestic cats (Felis catus) discriminate their names from other words」です。
イヌのカクテルパーティ効果についての研究は「The cocktail party effect in the domestic dog (Canis familiaris)」にあります。
イルカの名前についての研究は、「Dolphins play name game」でどうぞ。原論文は「Signature whistle shape conveys identity information to bottlenose dolphins」です。
多頭飼いの場合、自分と他の猫の違いを把握できるのかな?って思ってプレスリリースを見てみましたが、やはり「ネコカフェでは、「同居ネコの名前」と「自分の名前」を区別しているという結果は得られませんでした。」ということなので、少々微妙ですね。
色んな場所(家)で可愛がられている野良猫の場合、それぞれの家で異なる名前で呼ばれるのが割と普通で、それぞれの家では「この子は自分の名前をわかっている」と思っているのですが、当の猫にしてみれば実は自分の名前をわかっていない可能性もあるのかな、と逆に思ってしまいました。
あと1万年必要かな^_^