運動そのものには痩身効果がないという話を前回書いた。そうすると痩せるためにはいわゆるダイエットをするということになる。
過剰な摂取制限は健康を害するにしても、適度なカロリー制限はいのちを伸ばす。
日本人はそれほどではないけれど、肥満大国ともいえるアメリカにあってはダイエットは深刻な問題らしい。カロリー制限についての研究も80年以上前から行われている。
それらによると、ダイエットはアンチエイジング、あるいは寿命の延長に効果があることが定説となっている。
はじめに確かめられたのは1935年でラットの事例だったが、以来、ハエや線虫、酵母菌に至るまで、さまざまな生き物でダイエット効果が確認されてきている。
ヒトにおいてはどうかというのが最後の決着がついていないところ。その前段階としてアカゲザルにおける実験があって、アメリカの国立老化研究所とウィスコンシン大学それぞれで1980年代終わりころから研究が始まった。
その結果は2010年前後に相次いで報告された。ところが前者では効果なし、後者では効果ありと食い違った。そこで共同で比較検討され、2017年に共同論文が発表されている。
結論としては、カロリー制限は健康寿命の延長に効果あり。ただ、幼いうちから制限することは良くない。
ヒトについても昨年、わずか2年間ではあるけれど、30人ほどに15%のカロリー制限をした実験の結果が発表された。
カロリー制限しない人と比べると、体重で制限組は平均8.7キロ減。非制限組は1.8キロ増。ダイエットはメタボリックシンドロームを防ぎ、関連する病気の可能性を低減することで、健康寿命にもたらす効果があると報告されている。
腹八分目だ。過剰な制限は逆効果なのでご注意のほど。
カロリー制限の効果については日経サイエンスの過去記事『カロリー制限が老化を遅らせる』、また生物機能開発研究所の『抗老化・寿命延長におけるカロリー制限の役割』などの記事がサマリーとして便利です。
そしてアカゲザルの実験ですが、『老化介入・老化制御』に詳しく説明されており、比較しての研究は『医学研究:アカゲザルがカロリー制限したときの健康効果の解明』が発表論文ですが、『腹八分目はサルでも寿命を延ばす!?』の一覧表が分かりやすいです。
ヒトでの研究は『Calorie restriction trial in humans suggests benefits for age-related disease』ないし『Metabolic Slowing and Reduced Oxidative Damage with Sustained Caloric Restriction Support the Rate of Living and Oxidative Damage Theories of Aging』をどうぞ。