小橋 昭彦 2001年6月12日

 今日のビールのあては何にしようか。そろそろ旬が終わろうとしているあさりを酒蒸しにして別れを告げるか。鉄板の上で次々に口を開いていくあさりたち。食べてくれと言っているような。
 もちろん、そんなはずはないのであって、あれは単にあさりが熱せられるとともに、それまで閉じるために使っていた筋肉、つまりそれが貝柱なんだけど、がはずれて開いたもの。もともと貝の殻というのは開くようにできている。ふだんはそれを筋力で閉じているわけだ。
 それにしても、通常筋肉を収縮させるには膨大なエネルギーがいる。たとえば懸垂をしてみるといい。腕を折りたたんだまま、何十分も懸垂していられる人はそういないだろう。ところが、貝は長時間殻を閉じていられる。カキだって、1カ月閉じていることもできるという。しかも、人間は自分の身体さえ数分の懸垂で苦労するのに、貝は自重の何倍もの力を耐えられる。
 じつは貝は、ほとんどエネルギーを消費せずに筋肉を収縮させておくことができる。キャッチ収縮と呼ばれるしくみだ。筋肉は通常ミオシンとアクチンというたんぱく質がくっついて収縮するけれど、通信総合研究所関西先端研究センターの研究によると、貝の場合、このときツイッチンというたんぱく質がはたらくことで、いわばかんぬきをかけるような状態をつくり出しているという。
 この成果、たんぱく質モータを利用したナノマシン制御や血圧を上げる血管収縮の解明につながるかもしれないという。うむむ、二枚貝さまさま。今夜は貝柱まで残らず食べ、られるかな。

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2 thoughts on “二枚貝のかんぬき

  1. 二枚貝が口を閉ざすしくみについては、通信総合研究所関西先端研究センターの「プレスリリース」をご参考に。また、その機関誌「58号」「77号」に研究者山田章さんの解説が掲載されています。

  2. 今日の没ネタ。ローマ法王、ギリシアへの歴史的訪問(神戸5月4日)。シェークスピアの新肖像画(朝日5月28日)。国内最高齢だったカバ、53歳で死亡(朝日5月22日)。

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