小橋 昭彦 2001年6月1日

 現代の女性は、10万年から20万年前のアフリカに住んでいた単一の集団に起源があるとした「ミトコンドリア・イブ」仮説が発表されたのが1987年。その後、男性についてもY染色体の研究から、約19万年前のアフリカに起源があると発表されもした。
 世界の人類はアフリカに単一の起源があるとする説がこのところ有力になっている。つまり、それまで世界各地にいた北京原人やネアンデルタール人といった原人は数万年前までに絶滅し、その後アフリカから広がった新しい人類がとって代わったということだ。
 それに対するのが、北京原人などがそのまま進化して現代人につながっているという多地域進化説。こちらはこのところ旗色が悪い。このほどイランからニューギニア、カムチャッカ半島にわたる地域の男性1万人強のY染色体を調べた結果でも、3万5000年から9万0000年前にアフリカにいた人から分かれたことが確かめられた。
 仮に現代人のルーツはアフリカにあるとしても、そこにいたる人類進化のシナリオにはまだ不明な点が多い。人類とチンパンジーが分かれたのが約500万年前と推定されているけれど、それに対しても、約600万年前の猿人化石を発見し、それを現代人の直系祖先と考えるフランス国立自然博物館のセヌ博士らから、900万年から700万年くらい前ではないかという説が出されている。
 ともあれ、ただ今日明日のことを考えるばかりではなく、たまにはそんな数百万年前のことに思いをはせるのもいいものだよなあ。

2 thoughts on “ルーツ

  1. 人類のルーツについて記事を読むたび、じゃああちらこちらで、それこそこれしか関心ないんじゃないかというくらい様々な火種になっている差別問題ってなんなんだろう、と思います。
    自分が差別をしてきていないと、言いきれる自信がないのも正直なところですけれど。

    そもそも差別ってなんでしょうね。立場によって定義が変わるところがまた難しそう。

    あ、差別って人種だけではないですよ。いろいろ、と。

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