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ちょっと知的な雑学&トリビア

いま何時?

2001年5月17日 【コラム
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 思い通りにいかないときも多いけれど、夜半をすぎてパソコンを前にしないようにと心がけている。ディスプレイの明るい光を夜間に浴びることで体内時計を狂わさないようにと気づかってのこと。
 人間にはサーカディアンリズムと呼ばれる周期があって、それは時計遺伝子によってつかさどられている。複数の遺伝子とそれがつくりだすタンパク質が体内時計を整えているわけだ。本来は24時間よりすこし長い体内時計のリズムが地球の一日と一致できるのは、毎日光を浴びて時計をリセットしているからだ。これを逆手にとって、夜勤中明るい照明を利用することで眠気を防ぐなどの工夫も行われている。
 時計遺伝子は1984年にショウジョウバエで発見されて知られるようになった。人間の体内時計は脳の複雑なネットワークによるのではという考え方も根強かったが、1997年以降マウスなどの哺乳類やヒトでも同様の遺伝子が発見された。人間の体内時計も、けっきょくは小さな細胞内での遺伝子時計発振によっているわけ。その中心は、脳内の視交叉上核という場所にある。
 これまでショウジョウバエでは羽や足、触覚などにも時計があることが知られてきたが、人間でも皮膚や臓器の細胞の中にも時計があると、神戸大学の岡村均教授らのグループが突き止めている。時計遺伝子が、全身に分布する線維芽細胞の中でも働いているのだ。どうやらそのおかげで、夜食をしても胃や腸が昼と同じようにスムーズに消化活動をはじめたりできるらしい。
 ただ、そのままでは人間のからだのあちらこちらで違う時間が進むことになるので、脳にある体内時計が、一日一回、それらを同調させていると考えられている。その精巧さ、不思議さ。
 目を閉じて、自分のからだの時計の音に耳を澄ませてみる。植物にいたるまで、地上のさまざまな生命の中で、その時計は時をきざんでいる。

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2 comments to...
“いま何時?”
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小橋昭彦

体内時計については神戸大の岡村均教授がさまざまな成果をおさめられていますが、その関連として「時計遺伝子」「体内時計遺伝子を“生”観測」「時計遺伝子からみた哺乳類生物時計」などの記事・発表をご参照ください。「生物時計を動かす遺伝子」の記事もどうぞ。ほか、「体内時計のネジをまこう!」「照明で“体内時計”調節」も参考になります。


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中井

パソコン・ディスプレイの画素子の密度はテレビの2
倍、人体が受ける光量は約4倍になると読んだことが
あります。
昔は、「目が悪くなるからテレビから2m以上離れな
さい」とか言われたもんですが、じゃあ今OA機器に
向かって一日中仕事をしている我々って何なんでしょ
う…。




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 ほんとうなら今ごろは木星に、と考えてしまうのはSFファンのかなしさか。『2001年宇宙の旅』に登場したコンピュータHALが、大手コンピュータ会社名のアルファベットを一文字ずつずらしたものだったというのは有名な話。 HALのような手法は、換字式暗号の一種。ローマ将軍カエサルが考案したとされるもっとも原始的な暗号体系のひとつ、シーザー暗号もこの方式だ。以来、暗号はときに戦いの勝敗を決める重要な役割を担ってきた。中国領土に不時着した米偵察機の乗員の3分の1は暗号の専門家だったというから、その重要性は現在でも変わらないのだろう。 情報通信技術の発展を受けて、いま暗号の重要性が増している。個人情報の保護が重視されてるのが新しさだろうか。古典的手法の集大成ともいえる方式DESが米政府肝いりで開発された一方、暗号の歴史を変えたといってもいいだろう、公開鍵暗号が大学の研究室から生まれたのはなんだか暗示的でもある。 古典的暗号がひとつの鍵をお互いこっそり共有するのに対し、公開鍵暗号というのは、暗号文を作り出す鍵ともとに戻す鍵が違う。自分の持つ秘密鍵でしか復号できない暗号をつくれる公開鍵を公開しておき、不特定多数の人から秘密の通信をもらったり、逆に自分の秘密鍵で作った暗号だけに意味を持つ復号用の公開鍵を公開しておくことで自分からのものだという署名に利用したりする。 ちなみに暗号というもの、ぜったい解読できてはいけないというものでもない。解読に数十万年かかるのならその行為に意味はなく、暗号として役立つ。大戦中に日本軍が旧薩摩弁を早口でしゃべることで暗号としたという話が伝わるが、これなども、いわば意味ある時限内に破られさえしなければいい、ということが前提でできたことだろう。 いい柄のセーターだね、とか、試写会の券あたったんだけど、とか、隠しているようでほんとうは伝えたい、そんなささやかな暗号を使っていたころが、懐かしい。

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 目には青葉山ほととぎす初鰹と山口素堂。これは江戸っ子の初物好きから生まれた習慣で、脂ものっていないし、この時期のカツオがひいでておいしいかというと異論もあろう。ともあれ、初がつおのシーズンだ。 カツオはマグロの近縁。英語ではskipjack tunaと呼ばれたりもしてマグロと近くとらえられているけれど、日本語でマグロとカツオを混同することはない。マグロは刺身などとして食した一方、カツオは干魚とするのが常識、調理方法がまったく違ったためだ。堅い魚、カタウオからカツオと呼ばれるようになったゆえんでもある。ただ、鰹の文字そのものはかつてはウナギをさしていたらしい。 4月頃から夏にかけて日本近海を北上することでも知られるように、カツオは回遊魚。時速およそ40キロ、ときには100キロを出すというから、おそろしいスピードだ。現在の高速船でもここまでは出ない。 そんなに急がなくてもと思うが、スピードが落ちれば呼吸に支障をきたす、とまってしまえば浮き袋のない筋肉質の魚体は沈んでしまうとあれば、高速泳法はその宿命でもある。 勝つ魚として武家で珍重され、なまぐさを禁食した仏家でも鰹節は「木魚」の隠語で呼ばれ口にされたともいう。あるいは、ついつい酒がすすむ内蔵の塩辛、酒盗。さまざまに愛されてきたカツオ。いまも南海を高速で泳いでいるだろう彼らに、ありがとう。ぼくも泳ぎつづけます。

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