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自己修復

2001年3月16日 【コラム
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 たむらしげるの幻想的なコミック『ファンタスマゴリアデイズ』の一編に、サボテンでできた飛行機が彗星にぶつかる物語がある。ぼろぼろになった飛行機をみて修理できるかと心配する同行者に、サボテンだから自分で治るよ、と言い聞かせる。妙に納得。
 生物の傷は自然に回復するように向かうけれど、物質は難しい。そんななか、米イリノイ大学の研究チームが、細かなひび割れを自己修復するプラスチック材料を開発した(朝日2月16日)。液体の修復材が入ったマイクロカプセルと修復材を硬化させる物質を複合して混ぜ込んだエポキシ樹脂がそれ。材料にひび割れが起こるとカプセルが割れ、修復材が割れ目を満たす。それが触媒で硬化して割れ目を接着、修復されるしくみだ。
 自己修復といえば、機械技術研究所でも3次元ユニット機械の自己修復を研究している。壊れた一部品にそれが全体のどの役割を担っているかの情報がなくてはならないなど、工夫すべきところは多いという。人間だって、手の甲の切り傷が回復途中で間違って指になっちゃったらたいへんだ。そういうのは回復ではなくホラーという。手の甲は手の甲という一部でなくてはならない。
 家電リサイクル法の施行もあり、いま、壊れたり不要になったりした機械類の処分が話題になっている。製造と逆工程に気を配り環境負荷を軽減させる生産システム、インバース・マニュファクチャリングの重要性が説かれてもいたり。
 考えてみれば、ぼくたちはいま廃棄の文明を生きていると言えるかもしれない。21世紀、自己修復の文明に移行することができるのかどうか。サボテン飛行機はまだ当面望み薄だけれど。

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One comment to...
“自己修復”
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小橋

自己修復する機械の研究については、「機械技術研究所のプレスリリース」やそのキーマンへのインタビュー記事「自己組立・修復する究極の万能機械を追い求める男」、本人や研究仲間のページ「自己修復する機械の研究」「3次元ユニット機械の自己組み立てと自己修復」などをご参考に。インバース・マニュファクチャリングについては、解説記事「逆工程を入れる:インバース・マニュファクチャリング」をまずどうぞ。「インバース・マニュファクチャリングフォーラム」「インバース・マニュファクチャリング・システム研究会」「インバース・マニュファクチャリング・ラボ」なんてのもあるようです。




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 たらした一本の糸の先に横棒をくくりつけ、その両端にまた糸をくくり。微妙なバランスをたもちつつ風に揺れるモビール。昔ながらのおもちゃだと思っていただけに、はじまりが1932年にあると知って驚いた。 モビールの考案者はアレクサンダー・カルダー(朝日2月15日)。おもちゃではなく、立派な芸術作品で、彫刻の新分野を開拓したものとして知られている。動的なしくみを持ち込み、空間と時間をとりこんだ芸術表現を行うキネティック・アートの一種で、カルダーが1932年に発表した作品も、針金で組んだものをモーターで動かすしくみだった。電動ではなく空気の動きにあわせて運動する彫刻、つまりいまのモビールを発明したのはその後のこと。 モビールの命名者は、現代美術の大家デュシャン。便器などの量産品に署名しただけの「レディ・メイド」のオブジェでも知られる美術家だ。 どこかユーモラスに空間をただようカルダーのモビール。ふと、あの先に吊り下げようと考えるものは人によって違うのかな、とそんなことを想像する。あなたなら何を風にゆらすだろうか。

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 東京大学の原島博教授の研究室で、平均顔を作成するツールを開発、公開している。いろいろな人の顔写真を準備して実行すれば、それぞれの目や鼻や口といった部位の大きさや位置関係などを数値化し、平均値を算出して「平均顔」が作られる。 研究室では、実際に職業別に作った平均顔を公開している(日経2月18日)。銀行員やプロレスラー、政治家など。銀行員はまじめで実直そう、プロレスラーは太い眉ににらみつけるような視線、政治家は眼鏡の奥の表情に乏しいとろんとした目と、それぞれの職業の典型的な顔になっているのがおもしろい。 会社を辞めて独立したとたん「いい顔」になった知人の例は少なくない。長続きしているカップルは、血が通っていないはずなのに顔立ちが似ている。ペットと似た飼い主というのも珍しくない。いや失礼、ペットが飼い主に似たのかもしれないけれど。 ともあれ、こう考えると、たまたま特徴のある顔をした人がその職業を選ぶというよりは、職業が顔を作っているのだろう。4月になって新入社員が会社に迎えられる季節、研修もさまざまに行われるけれど、そうして「職にあった顔」が大量生産されていくわけで。 毎朝鏡を見て、自分が「いい顔」をしているかどうか確認する。化粧でごまかすのじゃなく、いい顔をしようと努力してみる。そのことが、日々少しずつ何かの型にはまってしまう自分を押しとどめ、理想の自分に向かわせていく、そんな気がする。

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