たらした一本の糸の先に横棒をくくりつけ、その両端にまた糸をくくり。微妙なバランスをたもちつつ風に揺れるモビール。昔ながらのおもちゃだと思っていただけに、はじまりが1932年にあると知って驚いた。
モビールの考案者はアレクサンダー・カルダー(朝日2月15日)。おもちゃではなく、立派な芸術作品で、彫刻の新分野を開拓したものとして知られている。動的なしくみを持ち込み、空間と時間をとりこんだ芸術表現を行うキネティック・アートの一種で、カルダーが1932年に発表した作品も、針金で組んだものをモーターで動かすしくみだった。電動ではなく空気の動きにあわせて運動する彫刻、つまりいまのモビールを発明したのはその後のこと。
モビールの命名者は、現代美術の大家デュシャン。便器などの量産品に署名しただけの「レディ・メイド」のオブジェでも知られる美術家だ。
どこかユーモラスに空間をただようカルダーのモビール。ふと、あの先に吊り下げようと考えるものは人によって違うのかな、とそんなことを想像する。あなたなら何を風にゆらすだろうか。
モビールについては、現代美術キーワードの「モビール」をどうぞ。「モビールの歴史」も参考になります。カルダーについては「Alexander Calder」が本家。
今日の没ネタ。「すす」が温暖化加速(朝日2月10日)。