しあわせですか
あなたにとって、幸福とはなんだろう。先進国においては、収入や社会的地位は、幸福感につながらないという。ワールドウォッチ研究所によると、年収1万3000ドルを境に、収入が増加しても主観的幸福感があがりにくくなるのだとか。自分を幸福と感じる人は状況が変化してもそれを保っているし、そうでない人は、ずっと幸福感が薄い。
社会心理学のバリー・シュワルツ博士は、選択肢の増加が幸福感を減少させている、と指摘している。選択肢が無い世の中がいいというわけでは、もちろんない。決まった線路は走りたくない、でも、仮に無数の切替ポイントがあったとすると、ああやっぱりあちらの線路にいけばよかったと悩むことが多くなる。そういうことらしい。
これは意思決定論のカーネマンも指摘していることだけれど、人は、利益より損失に対して強く反応する。選択肢が多いと、結果的に選ばなかった選択肢も増えるから、それが後悔を生み、幸福感を相殺する。選択肢がある一定水準を超えると、差し引きして負の感情の方が多くなっていくのだ。
それを避けるために、シュワルツ博士はこんなアドバイスをしている。まず、最高のものを選ぼうという思いを無くすこと。自分が満足できればよしとする。また、行きつけの店で買うと決めておくなど、選び方をまず選ぶ。そしていったん決めたら、ありえたかもしれない選択に思い悩まず、選んだもののプラス面を重視する。
子どもから高齢者まで、さまざまな層の幸福感調査に目を通す。気になったのは、子どもの世代で、かつてより今のほうが幸福感が減少していること。親たち自身、自分たちの世代より子どもたちの方がしあわせになると信じている人が少ない。それはなんだかとても悲しいことで、ぼくたちはずっと、よりよい社会のために苦労してきたはずなのに、どうして未来が信じられなくなったのだろうと、自分の心に何度も問い直している。
“しあわせですか”