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ちょっと知的な雑学&トリビア

宇宙の高速車線

2004年4月22日 【コラム
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 この百年でもっとも偉大な科学者を尋ねたら、多くの人がアインシュタインの名を出すだろう。彼の唱えた相対性理論は、それほどこの宇宙を説明するのに成功した。身近なところでは、カーナビが正しく位置を返すのも相対性理論あってこそ。
 カーナビは、複数の人工衛星から受信した時刻の差から位置を求める。人工衛星は秒速およそ4キロメートルで移動しているうえ、重力の影響が地上より弱い。そうした環境では時計の進みが遅くなる。相対性理論に基づいた補正をしなければ、1日で距離にして11キロメートルもの誤差になるという。
 こうして日常でも利用されている相対性理論だけれど、今も反論はある。NASAが一般相対性理論が予言する「時空のゆがみ」を検証する実験衛星を打ち上げたのも、それゆえだろう。真空中を進む光速は不変であるという相対論の基礎原理から導かれる、時間や空間が変化するという予測。
 光速度不変の原理に対しても、反旗をひるがえす科学者がいる。VSLと名づけたその理論を紹介するマケイジョの『光速より速い光』は、科学者の日常が生き生きと描かれていて楽しい。なかに、印象的なエピソードがあった。VSL理論でも光速が速度の上限ではあるけれど、その光速が変化する。特に空間を構成する宇宙ひものすぐ近くではひじょうに大きくなり、これをたどっていけば、時間の遅れ効果を受けず、かつ一般の光速よりはるかに速く宇宙を旅することができるというのだ。いわば宇宙の「高速車線」。
 現在の宇宙論としては、ひも理論ないしループ量子重力理論などが有力で、VSL理論が少数派であることは事実。でも、この「高速車線」のために、ぼくはVSLを信じてみたいと思った。光速旅行に伴う、年をとらず時代から取り残されるウラシマ効果を覚悟したり、ワープなどの無茶をしなくていいのだ。高速車線を行く「マケイジョ号」が登場した日には、真っ先に乗ってみたい。

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4 comments to...
“宇宙の高速車線”
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小橋昭彦

まずは「Joao Magueijo」の『光速より速い光』をどうぞ。科学者の日常が生き生きと描かれていて、しかも解説はわかりやすい。一気に読めます。アインシュタインはTIME誌の「People of the Century」でも第一に挙げられていますね。その「時空のゆがみ」を検証する実験衛星関連情報は、「Gravity Probe B News」「Gravity Probe B」でどうぞ。なお、カーナビと相対性理論の関係については、ぼく自身は『ニュートン』(編集長の竹内均さんが亡くなられたんですね)誌上ではじめに知ったのですが、「一般相対性理論とカーナビ」が詳しいです。


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kiyoto

今日は書込みありませんねー。
難しくて頭イタイ・・・。
一度ちゃんと相対性理論をわかりやすく書いた本を読んでみたいと思っていたんです。で、物理系の本を探していたら、ちょっと違うけど「ひも理論」の本を書店で見つけたのがもう1年以上前。 
いまだに積読。
あーあ。
科学の進歩は私の読書スピードより遥かに早く・・・・。


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小橋昭彦

ひも理論の本って『エレガントな宇宙』でしょうか、あれはあれでよくできた書籍ですね。でも、読む楽しさという点では、前述『光速より速い光』がおすすめです。相対性理論の解説もわかりやすい。


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ねたろう003

相対性理論が無ければカーナビが使えない!と言う話しをよく聞きます。でも本当にそうでしょうか?ちょっと補正をすれば済むことではないでしょうか。それにおそらく、他にもさまざまな補正をしなければ、移動中の車の正確な位置を知ることが出来ないような気がしますが、私の考えすぎでしょうか?
たいしたことの無い、実生活にほとんど影響が無い相対論をどうして拝み奉るのでしょうか?はっきり言ってオナラの方が真実味があります。人間の脳みそは結構いい加減らしいです。最近では、その人間の脳のいい加減さ、勘違いを利用して脳のマヒを治療するリハビリに注目があびせられています。
そういえば、朝から晩までダイエット、ダイエットとテレビで聞かされ、のどちんこに指を突っ込んで、たった今食べたものを出している脳みそまでダイエットをしている女がどれほどいることか、、、
我慢強さが男らしさだといって、切腹をしたアホちんこたれがどれほどいたことか、、
石原裕次郎や高倉健が大根役者であるにもかかわらず、テレビで大スターだと聞かされるとそう思ってしまう輩がどれほどいることか、、、これらはすべて脳みそのいい加減さからきているといえるでしょう。




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 大洪水が地球を襲う。主導者は予言し、それに先立つ午前零時、宇宙船がやってきて信じるものを救うと訴えていた。マスコミを避け、布教活動もしない。それでも、彼を信じる小さな集団ができた。やがて予言の日がやってくる。信者たちは固まって夜を過ごす。午前零時、しかし宇宙船はやってこず、数時間後、大洪水も起きない。 信者らは主導者を責めたか。信仰を失ったか。否。宇宙船も、大洪水もないとわかったとき、主導者の妻は天からの声を受信し、自分たちの必死の思いが天に伝わって、破滅を逃れることができたと宣告する。信者らは、その事実を今度は積極的に世間に伝えようとする。長い目で見るとこの集団は解散するのだが、予言がはずれた後しばらくは、信者らの活動はむしろ強固になった。 自分たちが信じていたことがむなしかったとすれば、あまりに自分が悲しい。予言の日までは自分の内面で信じていればよかったのが、予言がはずれた今、自分の信念を固めるには、外部に賛同者を増やし、社会的に認めてもらう必要がある。だから布教に励んだと社会心理学者は説明する。ぼくたちは自分を守りたいものだし、そのために、世界の見方を作りかえることもある。この集団ほどでなくても、多かれ少なかれ、ぼくたちは世界を、自分を守るために組みかえて今日を生きているのだろう。 昨日だって。「遊んで」子どもにせがまれて、「ちょっと待ってて」と答える。「ちょっとだけ?」「うん、もう少し」言いながら、ぼくは子どもの「ちょっと」という世界を、自分の都合に組みかえて返事している。だけど。だけどたぶん、世界を組みかえることそのものは否定できず、ぼくたちはそれから逃れられない。だからそれを自覚した上で、他人が組みかえた世界と接しなくてはいけない。「まだ?」子どもが聞くので「もうちょっと」と答える、今日はほんの少し、彼の世界の時間に近づけて。

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 ありさんとありさんがごっつんこしたのは、お買い物に出かけたときだったか。えさ場までアリが行列している光景はしばしば見かける。えさ場を見つけたアリがフェロモンで巣までしるしをつけたのを仲間がたどる。障害物が少なく道幅が広い場合はいいけれど、狭い場合はごっつんこだろうか。フランスの科学者が並行するルートを作って観察したところ、道幅が広く混雑していないときは1本だけを用いていたけれど、道幅が狭く混雑するときは、2本を均等に用いたという。アリだって、混雑にあわせてバイパスを通るわけだ。 ロンドンで行われるノッティングヒル・カーニバルのパレードの道筋を決めるにあたっての、こんな話がある。見物客の流れをもっともスムーズにするため、循環状にパレードしていたのをL字形に近くなるように工夫した。この案のもとになったのがコンピュータ・シミュレーションで、案を出した学者らは、群集の動きは昆虫がえさ場に引き寄せられる行動と同類と述べている。 群れとしてみればヒトもアリもないのだ。群れは、個々の意思と関係なく、全体として流体の動きと見なすことができる。高速道路での車の動きもそうで、工事や車線の減少もないのに渋滞するいわゆる自然渋滞も、ニュートン力学と関係ないにも関わらず、パイプを流れる粉末の動きに似る。 交通渋滞による日本全国での年間損失は、時間にして38億時間、費用にして12兆円。ITSを研究するグループによると、10台から20台に1台が5秒分の車間距離をとっていれば、車の減速が車列全体に及ぶことを避けて滑らかさを保てるとか。ただ、5秒といえば時速60キロの場合で83メートルあまり。少し広めで、後続車の理解を得づらい。こうして結局、今日もまた日本各地で渋滞、そして渋滞。巻き込まれたときは、ひとまず「おつかいありさん」を口ずさみ、自分もまた川の流れと同じく自然の摂理のなかにいると考え、気持ちを落ち着けるほかない。

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