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ちょっと知的な雑学&トリビア

五十音

2004年3月04日 【コラム
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 いろは歌のように、文字すべてを利用して意味のある文章を作る遊びをパングラムという。いろは歌の誕生は平安中期といわれるが、同じ平安期に五十音図も誕生している。もっとも庶民の手習いにはいろは歌が好まれ、五十音図が広まるのは明治になって教科書に登場してから。
 教科書に五十音図が採用されたのは構成が論理的だったからだが、これは古代インドのサンスクリット由来だという説がある。梵語は紀元前三世紀までに音の並びを科学的に決めていたと言われ、この表を読もうとカナを振ったのが五十音図につながったというわけだ。梵語で二重母音とされるエとオがアイウの下にきている事実も、この説を裏付ける。
 世界の言語の連鎖性を説く津田元一郎氏の著書に、各音の起源が説明されていて目をひいた。ア行は原霊性、ナ行は生産性、ラ行は輝光性を持つなどと定義した上で、各音のなりたちを見ている。たとえば日本語のソ音は祖先、基礎などのように「源」を示す性質を持つが、英語でもsource、soulなどs音に同様の傾向があるというわけだ。こうした性質が単語レベルにも現れて洞(ホラ)とhole、名前とnameなどのような共通性を生む。ただし、単なる偶然の一致と指摘する説もある。
 心理学のラマチャンドラン博士らは、言葉の発生に共感覚的な感性が入りこんだ可能性を指摘する。星型のようなとんがった絵を言葉で表現するとき、多くの人が「ギザギザ」といった耳障りな音を混ぜる。「ちょっと」や英語で言うteeny-weenyなどの表現は口をすぼめる音が混ざるが、物の小ささをジェスチャーでも表現しているというわけだ。この見方をとれば、音や単語の類似性を、言語としての連鎖に求める必要はなくなる。
 いずれにせよ、音はそれぞれ、祈りに似た思いから発せられた力強い何かであったのは事実だろう。ふだんそれらをまるで記号のように軽く口にしていないかと、振り返りもするのである。

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3 comments to...
“五十音”
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小橋昭彦

パングラムについては、「パーフェクト・パングラム・デスク」をご参照ください。津田元一郎氏の著書は『日本語はどこから来たか』をどうぞ。並行して大野晋氏の『日本語の起源』なども読んでおくと異なる立場の説をバランスよく摂取できるでしょう。「ことばの散歩道」もご参考に。なお、ラマチャンドラン博士による著書は『脳のなかの幽霊』が有名ですが、言葉の起源との関連については「数字に色を見る人たち 共感覚から脳を探る」の論文にあたってみてください。共感覚については、かつて「さまざまな現実 [2002.04.01]」でコラムにとりあげていますし、そちらで紹介しているリンク先等を参照いただきたいのですが、そうか、主テーマとしてとりあげたことはなかったんですね。


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yoshisuke

言葉って面白いですよね。
うちも娘が生まれて4ヶ月、
あーとかうーとか、だんだん、言葉らしきものを発するにつれて、人類の進化に思いをはせたりしております。


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fair

ラマチャンドラン博士の『脳のなかの幽霊』、面白いですよね。絶版になっていたので図書館で借りて読んだのですが、上のリンクをたどっていったら復活しているようですね。養老孟司氏が解説を書いていて、実はこの本から結構ネタを仕入れたのではないかと思っているのですが。




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 恋とは不思議なものだ。相手への思いやりが肉体的な痛みを和らげるかというと、そういうものでもないらしい。ドイツの神経科学者の調査によると、慢性の腰痛に苦しんでいる人の場合、配偶者に優しく扱われてきた人は、冷たく扱われてきた人より、3倍の痛みを経験するという。さすってくれたりお茶をいれてくれたりしてきた経験から、痛みと報酬をむすびつけてしまっているためとか。 もっとも、冷たく接すればいいというわけでもない。離婚を予想する方程式というのがあって、これによれば、会話において冷淡な態度をとる夫婦は、離婚の可能性が高まる。この方程式、10年がかりで700組のカップルを対象に調査した結果編み出されたものだ。将来の離婚の可能性を、94%の確率であてることができるという。 計測に参加する夫婦は、性生活や育児、金銭問題など、議論の起こりやすいテーマを網羅した会話を15分間行う。そこでの互いのしぐさや言葉を観察して数値的に評価、合計スコアを方程式に放り込めば、離婚の可能性が導き出される。観察時にプラスに数えられる反応は、思いやりのある声の調子や笑顔が1点、手を握るなど愛情を示すしぐさが3点、冗談を口にしたら2点など。マイナスに評価されるのは、相手が話しているときに目を泳がせるたり、非難したりすればマイナス1点、あざけるような態度をとればマイナス3点など。 この研究を行った学者グループの一人ゴットマン博士は、自分のパートナーのことをどれだけ知っているかを測る22の質問も提供している。試しにやってみる。相手の一番の友だちを知っているか。パートナーの人生の夢を説明できるか。離れているとき、よく思い出しているか。それぞれにチェックしながら、ふと、恋を深めるのは数字ではないと、あらためて思う。設問を読みチェックする、その一瞬にはさまる思いこそ、問われている。

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 地下鉄の線路は駅を出発すると下りになり、次の駅の手前ではのぼりになる。出発時は坂を転がる要領で加速し、到着時は逆に坂を利用して減速する。電力の節約になるわけだ。そんなことを聞いたのは、国立科学博物館の体験展示室。とすれば地下鉄は、ある種の振り子の原理を利用しているということか。 ある地点から別の地点まで玉を転がすとき、もっとも早く着くのは直線距離を転がした場合ではない。地下鉄に適用するなら、駅間をサイクロイド曲線と呼ばれる曲線にそってつなぐとよい。ジェットコースターが落ちるときのような曲線で、より具体的には、自転車のスポークの端につけた反射板が、進行とともに描く曲線がそれだ。仮にサイクロイド曲線で地下鉄を掘り、東京と大阪をつなぐなら、約十分で到達するという。重力だけのクリーンエネルギー。サイクロイド振り子は、振幅によらず周期が一定という特徴もあるから、東京・大阪間の中央地点まで5分かかるとすれば、静岡から転がり始めてもやはり5分ということになる。 振り子にもさまざまある。ほうきを掌に立ててバランスをとる、あれも一種の振り子で、倒立振り子と呼ばれている。ばねの下におもりを吊るして鉛直方向に振動させるのも振り子だ。思い起こせばあの日、ぼくは博物館の入り口でフーコーの振り子に出会ってもいたのだった。天井から吊るされた大きな振り子。地球の自転の影響で、振動面が移動する。極なら一日で一周するけれど、東京では41時間。南へ行くほど一周に要する時間は長くなる。 大阪市立科学館の調べによると、日本には50を優に超えるフーコーの振り子があるという。春を待つ日、子どもとブランコを揺らしながら、子どもたちに宇宙の中の地球を感じさせる振り子が日本各地で揺れている様を思い描いていた。それはなんだかちょっと、すてきな光景だった。

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