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退いて進む

2003年12月29日 【コラム
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 年が明けるとまたひとつ年をとる。身体は正直で、このところ尿酸値が気になっている。プリン体の最終代謝物が尿酸として血中に放出されるもので、値が高いと通風になる可能性が高い。そもそもの原因は、ヒトではUOX遺伝子が退化していることにあるという。プリン塩基を代謝する際に活躍する遺伝子だ。
 UOX遺伝子は古い型の生命にも見られる遺伝子で、霊長類の場合は、何百万年かかけて不活性化が起こったとみられている。尿酸値を高め通風を起こすような変異が淘汰されず残ったのはなぜか。調べてみると奥が深い。尿酸には強い抗酸化作用があり、老化の原因といわれる活性酸素を抑えることができるのだ。活性酸素の影響は、激しくエネルギーを消費するときに受けやすいけれど、血中に尿酸があると、高い代謝レベルを続けながらも、寿命が長くなる。
 具体的な個人を比較して尿酸値が高い方が長生きするという意味ではないが、鳥類やヒトは、体重に比べて寿命が長い。体重が重いと上がる代謝レベルの影響を抑えられたのは、通風の危険をおかしつつも、尿酸による抗酸化作用の恩恵を受けてきたからなのだ。恐竜の化石にも尿酸塩の沈着があったというから、通風は文明病というよりも、大型化したり代謝を高めた進化の代償ともいえる。
 UOX遺伝子に限らず、ぼくたちの身体には多くの退化の跡が残っている。尾椎や盲腸の虫垂、耳を動かす筋肉などなど。そもそも、最初に陸上にあがった「魚」は指が8本あったわけで、陸上に住み続けるうちに2本が退化して、今の姿になった。
 失われたり衰えたりすることもまた進化。ヒトには、およそ150の退化器官があるという。何かを失っても、それが環境に適しているなら、ぼくたちは未来に生きる。求めたり加えたりするだけが前に進むことではない。削ぎ落とし、あるいは退くことにもまた、価値がある。

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12 comments to...
“退いて進む”
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小橋昭彦

高畑尚之氏による「遺伝子の退化がヒトを生み出した」を参考にしました。UOX遺伝子の不活性化については「霊長類におけるプリン代謝関連酵素の欠損の生理学的意義と欠損機構の解明」などをご参照ください。進化と病気といえば、「進化医学 [2002.03.21]」というコラムも書きました。


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縄 嘉津記

通風→痛風ですね。(^_-)


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小橋昭彦

縄さん、ありがとうございました。

はい、お恥ずかしい。訂正いたします。


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竹内 延介

私も尿酸値が高く、薬を飲んだりやめたりしています。数値が高くてもそれが別の役割を持っていることをはじめて知りました。血液検査などで適正範囲を表示され、高いと問題と言った指摘のみでは得られない情報です。ありがとうございました。


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松井 佳史

最後のコメント部分
「何かを失っても、それが環境に適しているなら、
ぼくたちは未来に生きる。
求めたり加えたりするだけが前に進むことではない。
削ぎ落とし、あるいは退くことにもまた、価値がある。」
今年の最後に、希望のある言葉を読み来年への勇気と
ヒントを頂いた気がします。


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やあないん

人類が宇宙人になるときには
退化がさらに・・?


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Cyder.

> 「魚」は指が8本あったわけで、陸上に住み続けるうちに2本
が退化して、今の姿になった。
魚の指って6本なんですか?


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みぶ真也

そういえば、痛風になってから自分が若返った気がします!


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incorner

痛風ではないのですが、腎臓を一つ摘出してから十年間、
尿酸値を下げる薬を2種類飲んでいます。理由は尿酸が
腎臓を痛めるためですが、尿酸が抗酸化作用で寿命を延
ばしていたとなると、それこそ、「毒にも薬にもなる」
という現実ですね。貴重なお話、ありがたやーぁ


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incorner

痛風ではないのですが、腎臓を一つ摘出してから十年間、
尿酸値を下げる薬を2種類飲んでいます。理由は尿酸が
腎臓を痛めるためですが、尿酸が抗酸化作用で寿命を延
ばしていたとなると、それこそ、「毒にも薬にもなる」
という現実ですね。貴重なお話、ありがたやーぁ


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incorner

自己レスです。
通常は「送信」ボタンのところ「カチカチ」とありました
ので、ダブルクリックしてしまい、ダブルアップとなって
しまいました。すみません。
次ぎは「それいけ」となかなか楽しい工夫ですが、他にも間違った人がいるのでしょうか。
これも自然の摂理に反し、尿酸を減らしたための老化現象なのかなー。


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匿名

尿酸が寿命を延ばすという証拠は
どこにあるのですか…?
何かあれば教えてください。
尿酸は確かに活性酸素のスカベンジャーだけど
活性酸素が原因なら他のものでもいいはず。
例えばビタミンEとか。
そもそも活性酸素が寿命に関係しているというのも
まだ線虫かなんかのデータしかなかったのでは??




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 大脳について学んだ記憶はあるのだけれど、小脳については薄れている。そのサイズゆえ学ぶ気持ちが軽くなったかもしれない。運動をつかさどる脳というのが一般的な認識。最新の研究は、それに疑問符を提示する。 まずは名前からうけるイメージをぬぐおう。サイズこそ大脳に比べて小さいけれど、ひだが細かく表面積はあんがい広い。大脳の平均1900平方センチメートルに対し、1128平方センチメートルもあるのだ。大脳はおおむね新聞の一面ほどと考えればいいから、それを半分に折った面積分が、野球ボール大におさまっているわけだ。 小脳はどんなときに活性化するのか。ニューロンの電位変化を調べると、ネズミの場合は口、ネコは前足、サルは指を触ったときとわかっている。この違いはなぜ生じるのか。周囲の環境を知るとき、それぞれの動物がどこを用いているかに注目。ネズミは口、ネコは前足、サルは指。小脳はこうした触覚情報を処理し、比較する役割を担っているのではないかというわけだ。 小脳は、何かの機能を分担しているのではなく、知覚情報を統合するプロセスを支援していると考える。小脳をすべて取り除いた動物が、充分時間をおけばかなりの程度回復するという事実も、こうした見方を裏付ける。小脳に傷を負った患者は、かみそりの写真を見るとき、「鋭い」などの形容詞は簡単に思いつくのに、「剃る」といった動詞を思いつくには時間がかかるという。形容詞がひとつの物質の属性表現である一方、動詞を思いつくには他の物質との関係性の把握が必要になると考えれば、小脳が知覚を統合するという仮説に添って説明できる。 これからは、ひとつの現象や価値観で分析判断するのではなく、総合的にとらえる「小脳力」が必要かと、そんなことを夢想したクリスマスの日であった。

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 コップにミルクを注ぐと「ばんばーい」なんて言いながら乾杯をしたがる。1歳と半年あまりの手つきはなんだか危いのに、小さな手の中のミルクは、こぼれそうでこぼれない。親がサポートしようとしたときに限って、こぼしてしまうものだ。 コップを持ち、相手とグラスを合わせ、自分の口元に戻して飲む。これら一連の動作をとどこおりなく行うには、ある種のコツを身につける必要がある。そのコツとはいったい何なのか。動作のはじめから最後まで、細かく所作が決まっているわけではない。かといって、瞬間瞬間を意識して行為をしているかというと、そういうわけでもなさそう。 乾杯のシーンをビデオに撮るとする。相手とグラスを合わせる行為と、飲み干そうとする行為の分かれ目を示せといわれたら、誰でもほぼ同じコマを指摘する。そこで、そのコマの前後を切り出したビデオと、逆にその前後だけを抜いて編集したビデオを作る。両者を見せて、何のシーンかと尋ねたら、正しく答えられるのはどちらだろう。答えは、たとえ短くてもグラスを合わせる前後を切り取った画像の方。人間は行為の切れ目から多くの情報を得ていて、それは分節点と呼ばれる。 人間の行動もまた、分節点の前後で精度が求められ、その間は比較的自由に流されている。東京大学知能情報システム研究室で開発された、寝転んだ状態から脚を振り下ろす反動を利用して起き上がれるロボットは、そんな理論を応用している。コツをつかむのが上手な人とは、分節点を把握するのが上手な人といえるのかもしれない。 懇意にしている漢方の店に、経絡人形が置かれている。体表に網の目のように線がひかれ、ツボが表示されている。年の瀬、それを眺めながら、世の中もそんなものかもしれないと考えていた。一本の流れのように見える出来事も、分節点で連なっている。だとすれば、起き上がれそうにない難問にも、きっとコツが見出せる。新しい年。

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