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ちょっと知的な雑学&トリビア

創造性

2003年10月27日 【コラム
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 子どもが「ブロックしよ」とせがむものだから、何日かに一度はブロックを組み立てる。H型や井型、丸型などが揃ったプラスチック玩具。「何つくろ」問うと「何でもいいで」と答える、そんなときはしばし呆然としている自分に気づく。二つ、三つ組み合わせてみるが、手もとはさまよって。子どもが飛行機なりロボットなりを作っているのを見て、ようやく「よし、お父さんもロボットだ」とスピードアップ。組み合わせが、二足歩行ロボットに、あるいは宇宙戦艦になっていく。
 自由に何かを創れるほど不自由なことはない。皮肉にもそう思う。ロボットなり飛行機なりのカテゴリを与えられてようやく、ぼくは創造に移っている。それが心理学実験でも裏付けられていることを、『創造的認知』と題した書籍で知った。被験者にさまざまな形状の部品を示し、発明品を作るように指示する。部品を自由に選べるグループとランダムに抜き出した指定されたものを利用するグループがある。また、カテゴリも「家具」「武器」などから自由に選べるグループとランダムに指定されるグループがある。すると、もっとも創造的な発明品を生んだのは、部品、カテゴリとも指定されたグループだったのだ。
 別の実験では、先にカテゴリが決まっていて部品を組み合わせるより、まず何も考えずに部品を組み合わせて形を作り、あとでカテゴリが指定されて、それに合う解釈を迫られたほうが、創造的な発明を多く生んでいる。まず発明に先行する形があって、後ほど与えられる解釈という物語が、創造性を生んでいるわけだ。
 そういえばぼく自身、まずテーマを選び、それをどう解釈するか、どんな視点でみるかに苦心して、千篇の「物語」を届けてきたのだった。ぼくたちが今、何かを生み出せないでいるとすれば、それは制約や環境のせいじゃない。それに負けない物語力を、ぼくたちは持っている。

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11 comments to...
“創造性”
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小橋昭彦

書籍『創造的認知』をご参照ください。ジェネプロア・モデルを提唱。訳者の「小橋康章」さんのサイトもあります(同じ名字ですが、つながりはありません)。また「日本創造学会」もご参考に。その他研究者関連で、「駒崎久明」さん「吉田靖」さん「堀浩一」さんのページにも論文など参考情報があります。創造性に関する研究は「認知科学」とも関連して、いまもいろいろ進んでいるところですが、日本ではなんと言っても定番「KJ法」ですね。その他、「クリエイティブ・サーチ」「発想支援システム」もご参考に。


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toyo

最後の2行目の魔術師さま
今日の雑学1000号発刊おめでとうございますと共にお疲れ様です。私とこの雑学との出会いは発刊当時、社内のWeb管理を任されメインページのキラーコンテンツを探していたときに発見し、「雑学ページ」リンクで当時のWeb化への浸透に威力を発揮させて頂きました。息子さんの遼太朗君と同世代の息子を持ち、いろいろな子供の成長をタイムリーに共感できた事を懐かしく思います、息子も5歳(早生まれ)で来年から小学校に上がるようになり、子供の歴史と共に雑学.COMを歩んでいると実感します。
今後とも「雑学.COM」を楽しみにしています。
同世代38歳のサラリーマンより。


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Fsue

長男と次男は2歳違いです。ブロック遊びが得意な長男は取りあえず作り始めてからイメージを膨らませていたようです。次男はというと、兄の作ったスゴイ作品を見ているので、同じように作れないことに腹を立ててよく泣いていました。
自由に創造性を発揮する長男と、常に兄を意識して追いつき追い越そうとする次男。同じように育てようとしてもどうしようもない部分ですよね。
今長男は大学2年生、次男は高校3年生。あのころの長男の創造性と次男の負けん気はどこに行ってしまったのか。どっかで芽をつむようなことしたかしらん???


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松本秀人

毎回、楽しみに読ませていただいております。いつもながら、小橋様の幅広い知識、テーマを見つけるパワー、話題を喚起させる文章力に感心しております。
さて、今回のテーマ(ある程度のシバリがあったほうが、かえって創造力を働かせやすい場合がある)に関連してですが、読者から、「こんなテーマでコラムを書いてみて」とお題を頂戴するキャンペーンはいかがでしょうか。
藤山寛美氏のリクエスト芝居や、紙切り師匠の高座というワケでもないですが、ひとつ「どんな話題でもこなせる」という名人芸を見せてください。


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MAX

記念すべき1000号おめでとうございます。尽きることのない創造性とただの雑学に終わらせないヒューマニティに惹かれて、愛読しています。

子どもにおもちゃを与える際に、「○○用ブロック」を与えてはいけないんです。ただのブロックだからこそ、「よし、○○をつくってみよう」「今度は××をつくってみよう」と思うのです。そして「××のこの部分に適するものがないから・・・よし、あれを替わりに使ってみよう」という想像力が生まれるのです。

公園の遊具に「遊び方」が書かれているときがありますよね? 私はあれをみると悲しくなります。自分は「遊び方」どおりに遊んだっけ? いろんな「遊び方」を試して、楽しくなかったり、危なかったりして、自分の「遊び方」を見つけるのも遊びのうちじゃなかったっけ?

子どもの創造性を奪うことだけはしないように、気をつけたいものです。


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s_h_i_n_z_o

1000号、おめでとうございます。深い尊敬の念を抱いております。いつもありがとうございます。福井信蔵


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Zephyrus

記念すべき1000号おめでとうございます。質量ともに目くるめくものになってきましたね。
テーマがあって、それを超えようとする動きがあって、これがまず+。マーケティング情報がもうひとつの+。つまり頭二つ、単なる雑学から抜けています。
これからもひきつづき読む者を刺激、啓発して行ってください。これだけのものが無償で読めるなんて、私にはほとんど恩寵です。(褒めすぎですって? いいえ、こんなふうに受け取っている読者もいるんですよ)


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ヒイロ

1000号おめでとうございます。
毎回楽しみに読ませてもらっています。
何かをこれほど続けられるというのは余程のモチベーションをお持ちなのでしょう。
私はも見習わなければならないなと、自分への戒めも含めてここに記します。
これからも頑張ってください。


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小橋昭彦

みなさま、ありがとうございます。いろいろ感じつつ、感謝しています。

松本秀人さんの読者からの希望案はおもしろいなあ、でも高校生時代にその方法でショートショート書いていて苦しかったなぁ、難しいかなあ、とか、福井信蔵さんに「創造性」の話をお送りしちゃうなんておそれおおかったなぁ、とか、いやいやほんとささいなことなので、ほめすぎですよ、とか。

ともあれ、みなさまのメッセージに力づけられています。これからもよろしくお願いします。


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小野沢 実

小橋様
メールマガジンを購読しております、小野沢と申します。
1000号おめでとうございます。
いつも楽しく、かつ興味深く
読ませていただいております。
改めて見返してみると、最初に配信いただいたのは
345号。すでに600通以上拝見している訳ですね。
短期で終わってしまうメールマガジンが多いなか
これだけ長期にわたり執筆されることには
頭が下がります。
お体に気をつけて今後も頑張ってください。
それでは、また。


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すー

いま美術の学校に行っているのですが
与えられたお題に従って発想ができなくて悩むことが
あります。これからは、それを自分の創造性の限界で
はなくて自分の世界(物語)が別の所にあると気づく
チャンスだと思うことにします。




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 次元のない数というと穏やかじゃないけれど、つまりは単位のない数と考えるといい。たとえば、同じ10キロ痩せたといっても、関取の場合とぼくでは事情が違う。そこで、もとの体重を仮に100として現在と比較する。体重200キロの力士が190になったら現在は95だが、ぼくなら92になる。こうしてキロという単位をはずせば、比較がしやすい。 比率をとるのは、無次元化する代表的な方法だけれど、流体力学を専門にしている方ならよくご存知のように、無次元数にはその他さまざまなものがあり、現在およそ60個弱が知られている。有名なのはレイノルズ数だろうか。流体の速度をそれが流れる管の直径で掛けて、粘りをあらわす係数で割る。これが大きいほど、流体は勝手にあちこちながれる、つまりは乱流を生む。無次元数にはほかにもアルキメデス数、オイラー数、フーリエ数などあり、さながら著名な数学者、物理学者のリストを眺めているよう。 そうしたなかにストローハル数として知られる無次元数がある。周波数に長さを掛けて速度で割る。物体の後方に生じる流れを表すもので、たとえば橋脚の下流側に渦が出来る、その様子をストローハル数で説明できる。魚たちは泳ぐとき、ストローハル数が0.2から0.3という狭い範囲で最適になるようにしている。オクスフォード大学の研究チームの調査によると、鳥でも虫でもムササビでも、飛ぶときにはストローハル数を0.2から0.4というやはり狭い範囲におさめているのだとか。こうしたことから、科学者たちは、たとえ他の星で飛んだり泳いだりする生物が見つかっても、このストローハル数の範囲内にあるだろうと予測している。 こうしてぼくたちは単位を離れ無次元数で世界を見るとき、メダカからクジラ、ハチからツルに至るまで、すべては同じ原理のもとにあることを知る。泳ぎ、飛ぶものたちの後ろにストローハル数を描き、ぼくは心の次元が、解き放たれる思いを抱く。

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 なにげなく接していたものが、ある日とつぜん不思議に見えてくるという経験が、ときにある。たぶんそれは誰でも持っている感性で、「そそそそそ」と文字を連ねていると、「そ」という文字のあり方にだんだん自信が持てなくなって、それはほんとうにそういう形だったか、そもそもなぜそんな形なのかと考え込んでしまう、そんな経験を多くの人が持っているのじゃないだろうか。 いま手もとにあるペーパークリップにしてもそうだ。針金を二回まわした楕円形の、いわゆるゼムクリップとして知られているもの。技術史に詳しいヘンリー・ペトロスキー博士の著書でその歴史をたどっていて、多くの工夫が重ねられた結果、そこにあることを知る。そうするとがぜん、不思議になってくるのだ。外側の円周と内側の円周の間隔はなぜこの距離だったか。針金の先が円周より短いのはなぜか。紙からはずすとき、針金の先が短いため紙にひっかかったりするのに。 ペーパークリップが発明される前、人々は小数の紙を留めるのにピンで貫いていた。ゼムクリップはノルウェー人の発明と言われているそうだけれど、それに先立つ1899年、米国の技師がクリップを作る機械の特許を取っていて、そこに完全なゼムクリップの形が見える。発明品が市場に出回るには、製造機械と切り離せない。ゼムクリップを手作業で作るなら、人はピンを使い続けたかもしれない。 これまで多くのペーパークリップが考案され、特許をとってきた。今でも見られる三角形のクリップや紙を挟みやすいように先端が持ち上がったクリップ。日本での特許広報を検索すると、2003年に入ってからでも、ペーパークリップの特許が新しく取得されてもいる。加えて、ボールペンのキャップやメモパッドをはじめ、クリップする機能が含まれる製品の数々。見なおせば、工夫の余地はまだまだあるのだ。今あらためて身の回りを眺めると、すべての品々が「発明してくれ」と訴えている、そんな気にさえ襲われる。

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