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数字の魔力

2002年12月23日 【コラム
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 鳥類の一夫一妻について、9割は浮気・不倫をすると聞いたと指摘をいただく。調べてみると、出典は米サイエンス誌98年9月25日号。鳥類の子のDNAを調べたところ、一夫一妻制とされる約180種のうち、夫婦だけのDNAを引き継いでいたのは10%とある。一瞬、鳥類の一夫一妻制が否定されたかと思ったが、冷静に読み返せば、一夫一妻制のなかでも9割の種で逸脱が見られるという話だ。
 ぼくたちは、ときに数字に目を奪われて正しい方向を見誤りがちだ。単純な例、返信をくれるのは3回に1回という表現と、返信をくれるのは3.1回に1回という表現を比べてほしい。おそらく、小数点のある後者のほうが信頼性が高くとられる。
 続いて、これはちょっと知られた事例だが、あなたが勤め人とすれば、一年間のうち3カ月しか働いていないことを示す。まず、1日の睡眠時間を8時間として、365倍して年間122日は仕事をしていない。食事に1日3時間かかるとして、同じく年間46日が省かれる。週休2日なら年104日が休日。ということで、365日からこれらの合計をひくと、残り93日。ほら、あなたの仕事時間は3カ月しか残っていない。手順の誤りに気づかれたろうか。
 冒頭の例もそうだが、たとえ誤りがなくても勘違いしがちなのがぼくたち。たとえば日本の家庭のうちサンタクロースが訪れた家が去年より倍増した、と言われたらどうか。サンタが大盤振る舞いするようになったと感じるが、去年が1軒だったなら今年はわずか2軒。サンタの気まぐれの範疇だ。
 統計を読んだり扱うときの心がけを紹介した定番の書籍に、ハフによる『統計でウソをつく法』がある。原著の出版は1954年で、今も人気が高いロングセラーだ。現代でも、マウスや少人数のサンプルでの結論による健康情報に振り回されることが少なくない。半世紀を経ても、数字の魔力は健在らしい。

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8 comments to...
“数字の魔力”
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小橋昭彦

統計でウソをつく法』は定番です。新刊でも、『統計はこうしてウソをつく』などがありますね。サイエンス誌の記事は「A New Look at Monogamy」を。なお、「諫鼓を打て」内の「数字でウソをつくな!」はおもしろかったです。


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小橋昭彦

没ネタ。同時多発テロ後の空港封鎖で、飛行機雲と気象の関係にてがかり(日経サイエンス10月号)。漁業資源を守るため小さな魚をとらないようにしていることで魚本来の大きさも小さくなっている(日経サイエンス11月号)? 修正ニュートン力学(日経サイエンス11月号)。minuteはラテン語の最初の小さな分割、secondは二番目の小さな分割(日経サイエンス12月号)。基本単位のうちメートル、ルーメン、アンペアは秒を用いて定義されている(日経サイエンス12月号)。


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竹内英二

統計でウソをつくというのは、日常茶飯事ですね。
新聞はもちろん、政府刊行物や学者の論文等々。
ウソはつかないまでも、一部のデータを隠すことで、
事実を歪めてしまうことはよくあります。
自分も統計を使うので、気をつけたいものです。


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SoLong

統計で嘘がつけるのはかなり高等な人でしょう。私たちが日常数字を扱っていて陥りやすいのは、数字のために間違ってしまう、ということのほうが多いと思います。数字のバックにある事柄の関係をちゃんと把握していないと、見かけの動きに惑わされてしまいます。
試験の成績(点数)のおかげでどれだけ多くの子供たちが、見誤られている事か。気をつけたいものです。


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tama

>一瞬、鳥類の一夫一妻制が否定されたかと思ったが、冷静>に読み返せば、一夫一妻制のなかでも9割の種で逸脱が見>れるという話だ。

これって 180種の中の9割に逸脱がある。
つまり 18種だけが一夫一妻制 という意味では
ないのですか?
よくわからんです・・・・


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小橋昭彦

tamaさん、すみません「逸脱」という表現がややこしかったでしょうか、「例外」といっていいかもしれません。

たとえば新聞各社を調べたところ9割の会社で訂正記事の経験があったとします。でも、だから9割の新聞社がいいかげんで信用できるのは1割とはいえませんよね。どんな会社でも間違うことはある、とはいえても。

今回言いたかったのは、そういうことなのです。その数字がほんとうに指し示しているのはどういうことかをつかまないといけない、と。

ただ、前回のコラムで触れたように、一夫一妻の定義がおぼろなので迷うところもあります。日本の夫婦でも浮気や不倫があるようですが、日本人は一夫一妻ではないとはいえません。では、すべての夫婦間で浮気や不倫があったとするとどうなのでしょう。それでもやはり一夫一妻制という気がします。鳥類ではどうなのでしょうか。ややこしいですね。


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tama

鳥の件は納得です.
どーも アタマが 固いですな。

さて 問題です
殺人事件がおこりました
Aさんが 密室で 首吊り状態で死んでいます
かれは 金貸しで・・・・
1000人以上に恨まれていました
うんぬん・・
さて 自殺か他殺か?

みたいなものですね

3.1回と3回も 100倍すれば わかりました

次の1年間の労働時間は 休日分と 休日分の睡眠時間がラップしているが正解ですかね

この手の言葉と数字のマジックは 怖いですねぇ
簡単にだまされちゃいました

では


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おおはら

いまごろこんな前のにコメントしますが(メールボックスをあさっていたら出てきたので)

> 手順の誤りに気づかれたろうか。

手順のことなので、休日を引いてから睡眠・食事時間を引かないといけない、ということなのかもしれませんが(この部分は明らかな手順間違いですが)、そもそもこの方法で出てくるのは「時間」であって「日数」には即換算できないものであるというのが落とし穴なんじゃないかと思うんでした。




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 一夫一妻制とは何と尋ねられて、あらためて悩む。一匹の雄と一匹の雌が一定の期間つがいでいることと定義はできるが、どのくらいの期間かというと明確な規定は見つからず、では夫なり妻なりが浮気した夫婦は一夫一妻かと問われると、言葉につまる。 そもそもオスとメスがあるから、惚れた振られたくっついたまたかけたとややこしい。なぜ単性の細胞分裂で繁殖しないのか。仮にオトコとオンナ以外にオントという性があって、三者が揃わないと子孫を残せないと想像すればわかるように、遺伝子を残すためには性はむしろやっかいで効率が悪い。ひとりだけでできる細胞分裂が確実だ。 それなのにオスとメスがあって、両者の遺伝子を交わらせるメリットは何か。このところ評判の高いのが「赤の女王仮説」だ。オスとメスの遺伝子を混ぜ合わせることによって、遺伝子の構成を変え続けていくことが本質だという説。われわれは原虫類や病原菌、ウィルスなど、多くの寄生者に取り囲まれて生きている。それら寄生者は常に進化し、新しいタイプが生まれている。それぞれごとに対策を立てても間に合わないので、われわれとしてできることは、たえず自らの構造を変化させ、寄生種が進化したときにも耐えうる可能性を残すことしかない。 赤の女王というのは、ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』に登場する走り続けるキャラクター。なぜ走るのと尋ねられ、「同じ場所に留まるためには、力の限り走らなければならない」と答えている。われわれがわれわれであり続けるために、オスとメスがあり、交わることで新しい可能性を生み出し続けるというわけだ。 せわしない年の瀬にこんな話を思い出すと、なんだか体の隅々までよけいにせわしなさを感じて、ふとアリスと同じセリフを返したくもなる。「そんなに走りたいとは思いません」と。それでもやはり、明日には向かわないとね。

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